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Henry Lewis の売れ筋最新ランキング [2008年12月02日 10時38分] |
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【くちコミ情報】
現代における医療人類学の展開
この本の背景を理解するためには、今、文化人類学という学問自体がその存在理由を疑問視される危機的な状況にあることの洞察がまず必要である。 アルジェリアの精神科医、フランツ・ファノンの問題提起がその嚆矢となったポストコロニアリズムという思想は、従来の学問領域、特に文化人類学のような比較文化的な装いをもつ学問に対して、その正当性の次元に鋭い疑問を投げかけた。エドワード・サイードはその代表作の一つで、その発想を「オリエンタリズム」と呼んだが、西欧文明を唯一の進んだ正しい文明とみなし、そこから未開の文化を劣ったものとみなす思想が糾弾されたのである。そういった観点からの反省が文化人類学のパラダイムを大きく変えることになった。 たとえば、ベトナムにおいて以下の有名な話がある。アメリカ軍はベトナム人の子供に予防接種を行おうとしたが、軍が去った後で大人たちは子供の注射された腕を悉く切り落としたのである。これを野蛮の一言のもとに切って捨ててよいのか。これは西洋医学の側から土着の医学に介入した場合のひとつの悲惨な事例であるが、実際の医療政策においても単に西洋医学を接ぎ木したのみではうまくいかないことがある。 ここでバイロン・グッドが展開しているのは、このようなポストコロニアルの時代における医療人類学の展開に関する方法論的・哲学的議論である。なので、抽象的議論が多く、同じ誠信書房から出版されている同僚アーサー・クラインマンの名著「病いの語り」のような分かりやすい臨床事例はほとんど挙げられていないため、そのような内容を期待する読者にとっては不向きである。 そういう理由からこの本は学術的論文の集合であり、全く一般向けの書物ではない。逆に言えば、医療人類学の専攻を志す人にとっては絶対に外すことのできない基本文献である、ということになる。もちろん、ポストコロニアルな時代における異文化圏における医療との関わりについて関心のある読者にとってもお薦めの書物である。
傑作☆
異文化社会の病の表象がどれだけ物理的な疾患を正しく表象できているか、という問いかけはナンセンスで、疾患の正しい表象だとして特権的な位置を生物医学が占めるべき理由はないということ。生物医学もまた数ある「病のとらえ方」のうちのひとつに過ぎないのだ、とグッドは言います。 p 病=疾患は身体内に進行する物理的過程である以上に、文化的構築物であり、未開社会の呪術的医療も生物医学の物理的治療行為もいずれも等しく疾患の意味そのものを構成する文化的媒体の一部なのだというわけです。 p グッドは医療文化というものを、各社会が疾患という特殊な対象を記述し表現する単なる概念のストック以上のものと考えています。疾患は文化を通じて生きられた生のリアリティとなり、人間はその現実に直面した生を生きることになります。 p 病の切実さとは身体的な苦痛だけではなく、社会生活の現実を構成している「意味」の世界がもたらす苦悩でもあるのです。つまり、病は「解釈」されるものです。生物医学は、その解釈から極力「患者の私的生」を除外して患者を物理的治療プログラムの客体としての身体にまで切り詰めようとします(第3章)。しかし、それだけが病へのありうべきただひとつの解釈の様式ではありません。異文化社会の伝統的な医療行為、それと結びついた「病の経験」のありかたは生物医学とは異なる解釈の様式の存在を我々に教えてくれます。 p もちろん文化が全ての意味を決定できるほど病の経験は単純なものではありません。患者個人の自らの苦悩をめぐる自己解釈の実践が不可欠です。グッドがもっとも強調するのもこの点です。患者は自分の病との関わりの「意味」を絶えず自問しているものなのです。 p 病のリアリティとは、生物医学その他の文化的解釈体系が疾患の診断を下すことによって切実になるのではなくて、患者の人生における苦悩がそれに適応したり抵抗したりしようとすることにおいて切実なものとなるのです。 p 以上が本書の内容の概要です。 p 重症というわけではないですけど、アトピー性皮膚炎と長らく付き合ってきた(そしてこれからもずっと付き合っていくであろう)自分としては、この本は心から賛同してしまう洞察に満ちた傑作です。
三脇康生氏翻訳の本!!!
三脇氏は京大工学部、京大大学院哲学研究、京大医学部、京大医学部博士課程、パリ第一大学を卒業と最近流行の文理合一の流れを20年前からやっていて最近では美術評論等の活動もされている様子です。非常に興味深い一冊です。
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