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【くちコミ情報】
企業経営者にも
ノーベル経済学者であるAma tya Sen氏が、個人の自由の拡大により人間の潜在能力を高めることで経済成長を含む開発を進めるアプローチを提唱する。このアプローチは発展途上国における開発だけでなく、現在先進国で進む生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)向上にも通じる。個人的に最も驚いたのは、第5章において展開される組織の中に生きる個人にとっての自由と市場、国家、社会的機会の役割の議論が、現代社会、更には個人の社会的集合体としての企業にも実に良く当てはまることである。例えば、GMが労働組合との柵で、従業員個人を不自由な状況に置き(組合規定内労働の繰り返し)、潜在能力を伸ばすことも生かすことも出来ずに成長できない一方、トヨタが従業員の自由を拡大し(改善提案をする政治的な自由、機能横断的に仕事をする経済的な自由、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを受ける社会的機会の自由、終身雇用による生活保障等)、従業員個人の潜在能力を引き出し、その結果として経済成長を享受しているという見方は論理の飛躍が過ぎるでしょうか。日本企業を手放しで美化するつもりはありません。日本企業という社会には多くの不自由が存在します。大企業内では個人が仕事や勤務地を選ぶ自由もありません。中途採用者、女性、外国人労働者への差別も続いています。強制残業、硬直的な就業規則での拘束など挙げれば限が有りません。これらの不自由を取り除くことは、企業の本来の目的である顧客満足の向上や株主利益の追求と相反するものではありません。経営者として企業という社会の中での従業員個人の自由を拡大し、その結果経済成長を即すことができればこれ以上の社会貢献はないのではないでしょうか。本著の本来の意図とは異なるとの批判を承知で、企業の価値は売上や利益だけにはないと考える企業経営者、海外駐在予定者の方々にもお勧めしたい。
経済成長を超えて
開発とは何か、それは「尊厳ある人間それぞれが兼ね備えている本質的自由を増大させるプロセスである」とセンは言及する。それゆえ、開発を通して経済的な富を得るという従来の経済成長中心型の開発戦略に警鐘をならし、人間の潜在能力の発揮を妨げているような障害を取り除くことこそが開発であるとの言及もしている。それゆえ、1980年代後半頃までの経済効率性偏重型の開発思想から見ればセンの思想は斬新であろう。しかし純粋な新古典派経済から見ればセンのこのような思想は嫌われる側面がある。その一方で、世銀のウォルフェンソン総裁もCDFを強調しているように、またスティグリッツもUNDPのHDRの中でトリックルダウン理論を部分的に否定しているように、これまでの開発思想に変革が求められている。そのような中で、本書籍を参考とする意義は十分にある。しかしアドバイスとしては、まずは開発経済学入門編の一般的な書籍を読破され、開発経済の流れを整理してから本書を手に取った方が良いと思われる。
開発経済学を学ぶ人の必読書
この本は、98年にアジア人としてはじめてノーベル経済学賞を受賞したアルマティア・センが書いた”Development as F eedom”という原書を日本語に訳したもので、センが紹介した主な概念はこの本に濃縮されている。センは、人の豊かさ(幸せさ)は収入ではあらわさせず、自由度の大きさであらわされると主張する。センによる開発(経済開発を含む広い開発)とは、人々の自由を一つずつ獲得してゆくプロセスのことである。自由とは、例えば、政治家を選べる自由だとか、教育を受けることだとか、好きな食料を買える自由だとか、職業が選べる自由だとか、好きなところに行ける自由だとか、自然災害にあわない自由などいろいろ考えられる。経済的な自由もあるが、政治的なものや、人間の権利に関わるすごく基本的な自由もある。センによると、国が貧しければ、自由が制限され、人々は不自由な状態にある。だから、貧しい国の開発では、不自由を取り除く、つまり、人々の自由を1つづつ拡大して、自由を獲得してゆくことが大切になってくるという。本書ではわかりやすい表現でセンの言う自由の概念が理解できる。開発経済学を勉強する、経済学部、土木工学、都市工学、環境学部の大学生・院生は必読の書と言えよう。
経済学者ではあるけれど
経済学者であるからこそセンはノーベル経済学賞を受賞したのであるが、本書では開発というとそのまま経済開発とイコールになってしまう現代に警鐘を鳴らしており、彼が経済学の枠に納まらない碩学であることが証明されていると思う。発展途上国だけでなく、経済成長至上主義のの呪縛から逃れられない日本人にとっても示唆に富む内容である。その意味でもDevelopment As F eedomを『自由と経済開発』と訳すのは当たらないと思う。
「開発の在り方」を真剣に考えられる本
本書は、センが「開発の在り方」を世に問うた作品である。議論の本筋は、「人間生活の豊かさ」を満足度や目標達成に伴う充足感などの主観的指標によって計測するアプローチや、所得や資産水準などの客観的とはいえ画一的で個人間の多様性を考慮しない指標から計測するアプローチを批判し、諸個人の特性(年齢、性別、健康状態、文化・宗教的的背景など)から実際に個人が達成できる選択肢の自由度によって豊かさを計測するべきだと主張している、いわゆる「潜在能力アプローチ」の理論である。その具体例の一つとして、センは、バングラディッシュに住む男性と、アメリカのスラムに住む黒人男性の生存率を比較している。この例では、何倍もの所得を得ているはずの黒人男性が最貧国に住む男性よりも長生きできないのである。画一的な所得だけを見る方法では、黒人男性のほうがずっと豊かな生活にあると判断されるのだが、黒人男性の生活が豊かさの実体を伴っていなことは明らかであろう。こういった分かりやすい事例を多く用いながら、センは真の「開発」とは潜在能力の意味での「自由」を拡大することであると主張し、マハティールの考え方に見られるような国家主導による独裁的な開発を批判する。以上のことから、「豊かさ」を見つめ直し、望ましい開発の在り方を考える上で、本書は非常に重要な入門書と呼べるだろう。ただし、この本は残念なことに誤訳箇所が非常に多いのである。しかしながら、全体の意味は十分につかめるので、十分読むに値する本であることは間違いない。
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不公平を哲学する。
ノーベル賞経済学者の不公平に関する考察について書かれた本。 不公平というのを経済的な視点だけではなく、自由や個人の能力などの観点から見た点は真新しくないものの、それを学術的に分析したところにA.K.Senのすごさがあるのではないかと思いました。
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おいおい本当かよ??
ここに描かれるのは、o iana falalciが"fo ce of eason"で描いた歴史観とは別な世界です。ここでは様々な宗教が共存して、アショカ王やアクバル皇帝の下で融合し、理性の下で更なる高みへの昇華を求める知識人の世界です。著者はインドの長い歴史に見られる多元主義の伝統とその結果としての”世俗主義”のインドにおける本質的な重要性を何度にもわたって緻密で精巧な論理の下で強調します。そこで呈示されるのは多元主義の下で、”発見”されるのではなく、”選択”されるidentityというわけです。確かに、緻密で非の打ち所のない論理がここには展開されています。それだからこそ"a gumentative indian"というわけです。インドは確かに、このような解釈を可能とさせます。私自身も子供のときにこの不思議なインドの多様性への”寛容”なるものの一端にかすかに触れたような気もしないでもないです。でも、これは本当リアリスティックな議論なのでしょうか?何か決して否定することのできない道徳のお題目を聞いたような感覚が最後まで抜けなかった読書体験でした。
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【くちコミ情報】
社会的選択理論の必読論文集
本書に載せられた論文は、現在のセンの理論を理解するために重要であるだけではない。社会的選択理論を学ぶ上で必ず読まなければならない論文が載せられていると考えられる。 p 例えば、権利の定式化についての論争は『パレート派リベラルの不可能性』においてSenがはじめて行った自由の定式化に対する批判から始まったものである。このようなトッピクを研究しようと考えるならば、まずこの論文は読まれなければならないであろう。他にも功利主義への批判など、Senの良識ある考え方には学ぶべきところは多いのではないのだろうか。 p ただ、訳本で削除された論文がかなり多いのが残念である。
名論文が目白押し
「パレート派リベラルの不可能性」「合理的愚か者」「何の平等か」など、社会的選択理論を学ぶ人にとって、また、センのような経済学に倫理学の考え方を取り入れることに興味をもつ人にとって、とても重要な論文がのっているとおもいます。現在の社会的選択理論のいくつかの問題は、これらの論文から発せられたものです。20年以上前の論文ばかりですが、センのするどい思考に感動させられます。ただ、原典からかなり削除された論文があります。
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インド出身で、1998年にアジアで最初のノーベル経済学賞を受賞した著者は、「開発経済学の観点から途上国の貧困問題に取り組んでいる」と紹介されることが多い。しかし、実際は厚生経済学・社会的選択の理論への革新的な貢献がノーベル賞の受賞理由であり、経済学に倫理的な側面を復権させたという点が評価されているのである。 経済学は歴史的に「倫理学」と「工学」の2つの起源を持ち、かつての偉大な経済学者たちはこの両方のアプローチを用いて理論を構築してきたが、近代経済学の発展とともに倫理的アプローチの重要性は大幅に低下した。そのため「現代経済学は大幅に力を失った」と著者は指摘する。そして「厚生経済学は倫理学に注意を払うことで豊かなものになりうる」「実証主義経済学も、厚生経済学的考察を取り入れることで助けられる」と提言している。このように本書では、経済学に倫理学の視点を導入し「道徳哲学としての経済学」を樹立する必要性を訴えており、著者の経済学に対する基本的な考えが示されているといえる。 多くの人は、「人間は自己利益最大化のために行動する」などの、経済学の単純化・モデル化のための前提を何の疑問もなく受け入れているであろう。しかし実はこの前提に「人はいかに生きるべきか」などといった倫理学的な観点が欠落しているために、経済学が限界に直面しているという著者の指摘には驚かされるに違いない。 本書は、大学で行われた特別講義をもとに著されていることもあり、専門的な数式はいっさい使われておらず、また全体的に平易な文章で記されている。さらに巻末に詳しい人名・用語解説も設けられているため、研究者や学生だけでなく、経済学の知識が多少でもあれば無理なく読めるようになっている。 著者の研究に関心を持っている人にはその入門書として好適であるのはもちろんであるが、そうでない人にとっても、経済学や経済事象についてあらためて考えさせられる機会を与えてくれるであろう。(戸田啓介)
【くちコミ情報】
経済学を学ぶ際に
本書は、アジア初のノーベル経済学賞受賞者(1998年度)であるアマルティア・セン博士(Ama tya Sen,1933-)の“On Ethics and Economics”(1987)の全訳です。 本来であれば、本書を評するには、社会的選択理論における「現代の古典」とも謂える『集合的選択と社会的厚生(Collective Choice and Social Welfa e,1970)』などを押さえる必要があるとは思いますが、そうした意趣を抜きにしても、経済学を学ぶ者は、一度眼を通しておくべき書籍だと考えます。 確かに一面で、現代の経済学において倫理性や道徳性を望むのは、「八百屋で魚を求めるがごとし」なのかもしれません。だからこそ、本書で示されたようなセン博士の営みは非常に有意義なものがあり、経済学(決して、この学問領域だけに限らないのですが―)を考究する上で、貴重な「価値」を提供してくれる書物だと確信しています。
もともとの経済学とは?
本書でも触れられているように、人間の行動を少し観察すればわかるように、人間は、新古典派経済が前提としているような自己利潤最大化のみを目指して合理的に行動するものではないことはすぐにわかる。経済学の父とも言われるアダム・スミスは道徳哲学などについても学生に講義を行ってきたのにも関わらず、スミス以降の古典派や新古典派へ移行すると、道徳哲学や倫理観などが取り除かれた合理的な人間像が主流派経済学において大前提となった。しかし本書籍でも言及されているように、実際の人間行動においては倫理的思慮が無関係ではありえないような動機付けに基づくとも考えている。新古典派経済の研究者の方々も、このような人間の社会的な側面について理解されているはずなのだが、このような側面を安易に認めてしまうとこれまでの合理性の人間像に基づく研究成果を自ら否定することになりかねないため「経済学の再生」で追及されているような倫理的な側面を包含しようとはしない歪んだ学問関係がある。本書の内容を組み入れた経済学の再構築が求められているのではないだろうか?
容易であるからこその誤解も……
読みやすいものであることは確か。社会的選択理論、並びに厚生経済学(ここでこれら2つのワードは同義ととらえてよい)に興味を持ちやすい一冊だろう。しかし、残念ながらこの一冊では社会的選択理論は理解できない。この本並びにセン、または他の厚生経済学者(アローや、日本で言えば鈴村興太郎さんあたりか)の本をできる限り精確に理解したいと思うならば、すでに社会的選択理論を学んでいるか、あるいは何らかの社会的選択理論に関する本で、最低、アローの一般可能性定理を数理論理学を用いて、自分の言葉で説明できる位理解していることが重要かつ必要だろう。 p もしそうでなければ、彼らの最も評価されるところ、即ち論理的証明の精確さに基づく、完全に理想的㡊ª!社会創造の不可能性には、まず気づかないことだろう。そして、それを踏まえた上での、打開(正確には、どの分野を削るかの妥協)策の価値も深くは理解できないだろう。センにおいては、capa ility(日本語では潜在能力)を発揮できる環境を整えるという意味で、換言すれば誰でもスタートラインは平等にしたいという意味で、entitlement論を設定し、発展させていっていっており、それによって、彼の打開策を打ち出しているのだ。そこでそれによって彼なりに、できるだけ理想的な社会に近づこうとしているのだ。今この考えは国連開発計画(UNDP)にも、広く導入されている。 p こうした流れを押えるのにも社会的選択理論の、最低アローの一般可能性定理の、できるだけ精確な理解が費用である。センがノーベル賞受賞記念講演で述べている通り(詳しくは、99年7月のAme ican Economic Review参照)、彼の真の業績がどこにあるかを見誤ってはいけない。 p 以上述べてきたようにできるだけこの本を真に、本質的に理解しようとすることは、さほど容易くはない。だが、その道を開くという意味と、道が開けたときに読む本としては良書であるが、完璧に厚生経済学を説明してくれるものではないという意味で、評価をあえて星4つに留めるところである。
センの基本的な立場がよくわかる講演録。
センの基本的な考え方がよくわかる、平易な講演録。近代経済学が採用する合理的な個人、自分の利益のみを最大化しようとする個人という前提を額面通りに受取すぎ、議論のための単純化にすぎないことを忘れてしまうために、経済学が必要以上に自分をせばめ、力を失っていることを指摘し、倫理を経済学に再導入するべきだと論じている。また同時に、経済学との交流を通じて倫理学も得るものがあるはずだと指摘する。なるほどね。講演なので、手を動かして式を追わなくても楽に読めるのでありがたい。センの議論の大筋をつかみたい人にはおすすめ。ただし、訳者の一人による解説は酷い。素人はセンを読んでわかったつもりになるな、アローらの一般可能性定理がわかってないやつはセンの主張は理解できないぞ!と無用な脅しをかけ、さらにセンの英語は複雑だのレトリック重視だのわかりにくいだのと、これまた人を遠ざけるようなことばかり。ごく普通の英語だよ。そしてじゃあ、そうやってでっちあげたセンと読者との距離を埋めるために何をしてくれるのかと思ったら、その後は単なる自分の身辺雑記。また、人物や事項解説がついているけれど、あまり役にたつとは思えないむずかしい記述ばかり。これらを省いて、2000円以下におさえればもっとよかったのに。が、まあそういう部分は読まなければいいだけのこと。セン入門としていちばん手頃な本ではないかな。
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