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【くちコミ情報】
19世紀からの欧州文化史を縦断的に見通した快著
文学−美術−哲学などのジャンルの垣根を超えて世界を縦断的に見通した時に何が分かってくるか?これに興味を抱く読者に打ってつけのテキストである。また、著者のまえがきによれば、美食や男女性愛くらいにしか快を見ない世間に対しては、(無関係と思っていた)「二つのものが一つと分かる」瞬間の知的「快」を感じ取る感性を促す啓蒙の書であり、「リンクを暴く」知の努力を疎ましがる旧套の学術志士に対しては、それで良いのかと問いただす糾弾の書でもある。 著者は、英文学の歴史において、シェークスピアの没後からデフォーの『ロビンソン・クルーソー』の出現までの約100年間(1616-1719)が活動停滞の空白期間となっている点に着目した。この空白期に「超」英文学の重要な秘密があると睨んだのが本書の契機らしい。 英文学を文学の視座のみから見つめても一番重要な事実は発見できない。「合理VS幻想」という批評的視点を棄て、近代を光のパラダイムとして捉える試みを全くの我流の方法で30年続け、無関係と思っていた二つのものを繋ぐ意識のリンクを暴く体験を繰り返すうちに、明確な一本の線が歴史の中を貫流しているのが見えてきた。本書はそのような知的冒険の報告書とのこと。 読者は、納得のいく我流を探り、それを続けることこそ重要であることを理解するだろう。 「二つのものが一つと分かる時の嬉しさ」とは、文学−美術−哲学などのジャンルを超えて文化史を縦断した時に見えてくる「関連性=横のリンク」を指し、そんな「リンク発見」の例が数多く紹介してあり楽しい。 冒頭近くに示される例では、没後40年後からシェークスピアの上演が封殺されていった社会的背景、それと関わるロンドン王立協会(40回 P35-135)や薔薇十字団(10回 P41-60)の存在、それらの動向と無関係でないコンピュータの発明、などについて分析を試みる箇所が圧巻。 他の頻出するキーワードには、(英国で流行った)グランドツアー、ピクチャレスク(50回 P23-28,138-181,234)、マニエリスム(77回)、魔術的哲学、ロビンソン・クルーソー、等々。 通読後に再読したくなるが、それは、一つには1度の通読では充分に咀嚼し切れないほど濃厚な内容であるが故にであり、また、パーティなどでのネタに持って来い?の「リンク」の例を全て記憶したい誘惑によるものである。 しかし、例出してある複数のリンクどうしのリンク性を見通した時に何が分かるか?これについては、その検討を読者に委ねている感があるからでもある。それを実行するには、重要項目を紙上に書き出しながらの再読が必要となるだろうが、これほど楽しい作業はないかも知れない。
視覚文化への招待
英文学というよりも、シェイクスピアからコナン・ドイル(ホームズ)にかけての文化について、世界の認識の変化を言葉と視覚の遷移を通じて語っています。 したがって、個々の文学作品や文化的な要因は、独立した作品として扱われるのではなく、歴史の大きな流れの中の位置付けについて語られることになります。 本書を読んで初めて知ったことも多く、特に視覚面から文化を捉えるという考え方は、恥ずかしながらはじめて知りました。 多くの意味で考えさせられることも多く、これからも折に触れて読み返すだろうと思います。
もしも世界が百人の高山宏の村だったら
碩学といえば碩学、方々に話が散らばっていて、マニエリスムの見えざる糸を見出した との瞬間のひらめきに狂喜乱舞する著者本人の興奮がダイレクトに伝わってくるような、 そんな一冊。 食い散らかしている、といえばその批判は極めて妥当なのだろうけれども、本人が何よりも 学問が楽しくて仕方のない人で、体系化とかに全く興味がないのだろうな、という感じ。 ある面では読者を無視している、といえばその通りかもしれない。 けれども、それ以上に、弾むようなその躍動感が素晴らしい。 楽しいからやる、それが悪いか――悪かろうはずがない。 ただし他の翻訳なんかにしても抜群にうまいけれども、いかにも癖の強い人だから、 彼一流の節回しへの好き嫌いはもろに出る、とは思う。 入門、と銘を打っているのだからこういう使い方もありだとは思うが、話題が方々に 飛び散ってくれているおかげと言うべきなのか、個人的には文献リストとしてもものすごく お世話になった覚えがある。とりわけ頻出する『オックスフォード英語辞典』の底力は 今さらながらに驚嘆させられる。
連環、連環、連環
理工系の人間なので、ニュートン「光学」からの イントロダクションに引き込まれました。 その時代の詩人が、網膜をも意識していたというに驚きました。 そのような連環、連環の連続で、まさに時代を丸ごと読み解く文化史、 という名にふさわしい、文学を超えた著作です。 本来英語が持っていた意味の重なりを失わせることで 元来のシェークスピアは死に、現代のシェークスピアが生まれた、 という事も教えてもらい、兎も角面白い本でした。
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【くちコミ情報】
学魔とは良く言ったもの
エッセイ風に高山氏の半生や考えについて語られています。 ところどころに出てくる高慢な物言いは不快ですが、研究にかける熱意や勉強量には敬服します。 視覚というキーワードで、文化のさまざまな局面を繋いでいく分析は大変面く読めました。私は、この本と同じ著者の「近代文化史入門」で視覚文化への興味をかきたてられました。 視覚文化について手ごろな入門書を探している人にも薦められると思います。
学魔の作り方
本書はインターネットに連載されていたエッセイを書籍化したもののようです。 四方田犬彦氏の「先生とわたし」に高山氏が東大助手時代に書庫の検索カードを 作ろうとしてあまりの規模の大きさに挫折し云々との記述があり、ただの収蔵書 籍の一覧カードのようなものを想起したため、どういうことなのか意味が分から なかったのですが、本書には高山氏の企図したものと七転八倒ぶりが詳説されて おり、やっと納得がいきました。 なるほど、まさに学魔だ、と思わせる一冊です。
人文学を読むものにとって必読の「ガイド」
「文学」を中心とする人文学を志す者がとるべき知性への没入の方法が示されています。(火宅の私生活をまねる必要はまったくないが)。欧米の文学を学ぼうとする人にとっては、格好のガイド本でもあります。漢字の多さ、独特の句読点使いもまた一興。
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【くちコミ情報】
知るって楽しい!
連続講義を書籍化したものとの事ですが、毎回A3判の大量の資料が 配布され、1回当たり数時間にも及ぶものであったとのことですので、 かなり要約されているのだと思います。 元の講義が聴いてみたかったものです。 本書にある、"delight"の本来の意味が「他人の不幸は蜜の味」 というものであったというのを知ってから、JTのテレビCMを 見るたびに、ニンマリしてしまいます。 そんな「知るって楽しい!」を体験させてくれる一冊です。
高山宏の語りを体感する一冊
端倪すべからざる人物である。 p 視覚と芸術の関わり―なにしろ人間の得る情報の95%は視覚経由なのだという―を軸に、古今東西縦横無尽にジャンルを移動し、語りつくす。江戸の職人の捏造した人魚がなぜ海を渡ったのか?観相学と推理小説の関連、谷崎と英国式庭園。一見意外そうに見える組み合わせでも、高山御大の手にかかれば鮮やかなスペクタクルとして説得的に提示されてしまう。いや、これだけのパースペクティブなくして「文学」を語りえようか??? p 実に勉強になるし、視覚を堪能できる一冊である。
グロテスク・ピクチャレスク・マニエリスム・蛇行
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高山師の眼
推理小説というジャンルを全小説という別集合から/へと覗きみること。それはたとえば探偵が、一見すると関係を持たない出来事に眼を光らせてみることであり、そうした探偵を作り出す作者の視線をも窺い見る必要が推理小説論の基本姿勢なのだろう。高山氏の、一見山師的ないかがわしさは、知の諸領域を横断する者の博識傍証ゆえに、凡人の知的放棄によって生じてくるものかもしれぬが、彼のマニエリスティックな文体の意義がわからぬ者には他の著作や翻訳を読んだところで同じこと。内容と形式がかくも一致する人は珍しいものだ。やはりホームズ論の秀逸さは誰にも負けないであろう、「見ること」に関する視線の問題が圧巻である。視覚論はどうしても疎外論を通過しなくてはならないものであることがよくわかる。
文学者だけではもったいない。
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単純か過剰か?
スタフォードの主著ということで世評も高いですが、言語の支配に対する可視性(イメージ)の復権という単純な図式が大元にあり、それに違和感を覚えてしまうとしんどい本だと思いました。可視性や身体を貶めることと特権化することの相補性こそ、近代の言説として批判的に考察されるべきなのでは……。博覧強記ぶりはすさまじいものの、切り口は金太郎飴的ともいえる反復なので、それを退屈と感じるか、スリリングな過剰と感じるかは分かれそうです。訳者あとがきにあるように、高山宏氏の本にテイストは似ています。氏のファンおよび18世紀ヨーロッパ文化に関心のある方はまちがいなく必読でしょうね。
スタフォード最強の一著がついに日本語に!
ついに出た。 『グッド・ルッキング』の書評を書いてから一年半。高山宏氏渾身の訳業である。 翻訳にまつわる苦心については「訳者あとがき」に縷説(るせつ)されているけれども、一日に五分、十分、十五分という訳し方らしくて、それもそうだろうと思う。 内容については原書の書評で述べたので繰り返さないが、これで「スタフォード学」がひとまずの完成を見る。 『アートフル・サイエンス』『グッド・ルッキング』『ヴィジュアル・アナロジー』と揃ったところに、大作『ボディ・クリティシズム』が出るという具合で、これに来年(今年?)出るという予定の『本質への旅』が加われば、まず最強のラインナップとなるはず。 いつも言うことだが、スタフォード氏の言う「イメージの持つ『分かる』力」、そして何よりも氏の「明るさ」、これこそが今まさに必要なものだと思う。 この人は決して安易なネガティヴ発言をしない。今の時代、ネガティヴになろうと思えば材料はいくらでもある。それを見据えた上で、「つなげる知性」を「イメージング」によって見出していこうというその肯定的な姿勢に、感動をおぼえる。 値段的にも大変な書物だが、立ち読みでもなんでもいいので、ぜひ一度、手に取っていただきたい。傑作である。
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江戸っ子の洒落っ気
学術書だが、実際の絵画作品の掲載も多く、文章も読みやすく面白い本である。 江戸の町民文化の最大の特徴のひとつは、快楽の追求に大きな比重が置かれていること。その快楽の中の大きなひとつが、春画や性に関するものである。(実際に、江戸時代はセックスに関するオモチャも多かったみたい。) もちろん江戸時代には検閲があり、あからさまな描写ができない。そんな中で、イコノグラフィーを用いた面白い春画が次々に生み出されていく。現在の私たちの目にぱっと見には春画と見えないものも、著者の説明を聞けばなるほどそうだ。特に有名どころが中学校の教科書にのっていたことを思い出して苦笑した。 単に、どれが春画だとか、どう春画を「読む」か、だけでなく、もうひとつ上の次元で、春画全体に共通する枠組みを取り出し、当時の社会や文化のあり方を考えようとする著者の姿勢はすばらしい。 知的に非常に満足でき、またなかなかににまりと笑える本である。
片手で読む江戸の絵?
江戸時代の研究では、「お江戸でござる」に出演している杉浦日向子さんをはじめ、多くの研究者がいます。 春画では林美一さんが有名です。 この本を読んだ人には「浮世絵春画を読む」中央公論新社をお勧めします。
伝統ってなに?
いったい伝統というものをとなえる人物は「何を根拠」にいままで語ってきたのか。伝統を大切にとか言う人の語る「伝統」はおうおうにして明治以降作られた幻想を語るか、あるいは人口のたった5%しかいなかった(でも支配層ではあった)武士しかさしていない。いったい歴史とはなんであって、どう語るべきものなのだろうか。江戸やそれ以前、ほとんど武士というものを中心に歴史は動いているが、はたしてそれはホントにそうなのだろうか。この本はスゴイものを示してくれる。これがロンドン大学助教授だというのが悔しい。江戸時代の男性は男性とも女性とも寝た。これはある意味衝撃的ですね。そして、春画にそういった江戸人の性的な、そして平和で牧歌で華麗な生活が見えてくるではないか。なぜ日本人ではわからなかったのか。研究できなかったのか?平和な時代を平和ぼけというのは簡単だ。しかし、この性とのむすびつき…。江戸を研究しよう。
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