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   福永 武彦 の売れ筋最新ランキング   [2008年09月08日 03時51分]
23ページ中 1ページ目を表示しています (110件)


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¥ 460(税込)
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カスタマーレビュー数:18

くちコミ情報
孤独
まだ高校生の頃になにかのきっかけでこの本の存在を知ったのですが その頃は外国文学ばっかり読んでいたのですが日本文学にもこんなに素晴らしい作品が あるのかと思い知らされた作品でした。 日本文学は芥川龍之介や夏目漱石などが最初に読まれることが多いと思うのですが 彼らの作品は人間や人生に関して芸術として抽象的にしか表現していなくて、 日本人的なあいまいさで表現してきたような気がしてあまり好きではありませんでした。 この作品は哲学的であって、孤独、愛、戦争、芸術や人間についての魂の叫びをストレートに主人公は表現しています。 ゲーテの「若きウェルテルの悩み」、マンの「トニオクレエゲル」的な若き魂の叫びです。いまでも自分の人生の糧になっています。 青年期にこの作品に出会えてとても良かった。学生の方たちに真っ先に読んでもらいたいです。
愛の理想化が孤独と苦しみを生むならば、愛とは一体?
「汐見さんはこのわたくしを愛したのではなくて、わたくしを通して或る永遠なものを、或る純潔なものを、或る女性的なものを、愛したのではないか…」と汐見が愛した藤木千枝子は手紙に書いている。 千枝子のこの疑いが妥当だとすれば、汐見が千枝子の兄をも愛したということが少し理解できる。彼は永遠を愛し、純潔を愛し、女性的なものを愛し、それを感じさせる人を愛した。それを愛することで彼は己の孤独を癒やしたのだろう。だから彼にとって愛の対象は男とか女とかいったことで限定されない。 そういう意味でこの小説は「同性愛」を扱ったものと言うのは正確ではない。むしろ魂の愛とでもいったらよいだろうか。 男が女を愛するという自然な図式の裏には、多分に肉欲という生物的作用が働いている。汐見の孤独は「魂の孤独」であって、肉体的な繋がりで癒やされるようなものではなかった。だから彼は千枝子を抱こうとするその時、急激に冷めていくのである。 「それは一つの燃えるかたまり、僕の欲望の具象化された現在だった。それはもう千枝子ではなく、僕の書いている小説の中の少女、作者が恣にその運命を操ることのできる一人の登場人物にすぎなかった。(中略)僕が感じていたものは、愛の極まりとしての幸福感ではなく、僕の内部にある恐怖、一種の精神的な死の観念からの、漠然とした逃避のようなものだった。僕は何かしらが怖かった。僕の手の中に抱かれている千枝子が、ふと、僕にとっての未知の女、僕の内部への闖入者のように錯覚された」。 千枝子を抱くことで彼女をただの女に変え、愛の対象ではなく、肉欲の対象とすることに汐見は躊躇した。それは自分の信じた愛を自身で裏切ることではないのか…。 彼は考えすぎで、もっとシンプルに考えればよかったのかもしれない、というのが自然な見方だろうが、そんなことは彼もわかっていたはずである。だが、現実の世界では彼は摩擦を生じずにはいられない。それは自我(理想)と世界(現実)との摩擦である。 「今はもうこの自我の他に喪うべき何ものもない。そしてこの自我という奴が、僕の最も嫌いな代物だ」と汐見は言う。彼を孤独に追いやったもの、それはこの肥大した自我であった。自我は現実では不可能な理想を求めさせ、彼はその狭間で苦しみ続ける。そこで彼は無謀な手術を志願し、術中死していくのであるが、もし自殺だったら、こういう彼の動向を、やれ臆病だの、やれ人生からの逃げだの、やれ同じような思いを抱えている人は他にもたくさんいるだのという、まるで圏外からの批難が彼を襲ったであろう。だから作者はそれをかわすため、自殺という方法をとらずに汐見を殺したのである。彼を批難できるものは彼と同じ孤独と苦しみの中でそれでも希望を見出した人に限られる。だが、そんな人間は一人も存在することはない。 小説は美しく彩られてはいるが、現実は残酷なものである。我々の社会は、彼のように孤独な魂を救う術を見出すことができるだろうか。
確かな透明感
男性の描く男同士の愛とはどんなものかと思い手にとった。 その前に三島の仮面の告白を読んだが、同じ男性でこうも印象が違うとは驚いた。 本作は文章が流れるように紡いであり、透明度の高い作品だと感じる。 こういう稚拙な単語でしか表せない自分の語彙力が悔やまれて仕方ない。 汐見の持論もなかなか共感する部分が多く、愛を媒体にして人類共通の孤独を浮き彫りにさせていると思うのだが一度読んだだけでは私の頭でかみ砕くことは難しい。 近いうちに購入して再読する予定。いや、是非とももう一度読みたい! 精神面での描写が多いのだが、魅力的な文体も相俟って読んでいてドキドキしてしまった…。 作者が男だな!という部分は殆ど感じられないと思う。 節操のないBLジャンルが氾濫している今の市場ではまずお目にかかることが出来ないレベルのものだろう。その方面目的で読むには非常に勿体ない。是非『文学作品』という視点から味わってほしい。 今の歳で読めて良かったと思うし、これをきっかけに更に完成度が高いと評価されている『忘却の河』や『死の島』にも目を通してみたいと思う。
儚く美しい一篇の詩
結核が死に至る病では無くなった今日結核療養所としてのサナトリウムという語はもう死語に なったのだろうか。結核は多くの人々多くの青年達を死に追いやったがまた多くの文学作品を 生み出した。その作品達は若さの死故何れも悲しく美しい。戦争も遠い過去となり若くしての 死がなくなり死ぬのは年寄り、癌か心臓病か老いか。物語も青年達の死を扱ったものがなくな り精々白血病あたり。この作品はまだ青年達が戦争や病で多く死に絶えた頃のあまりにも美 しくはかない奇跡的な輝きを放つ物語。 〜もし僕等がお互いに愛し合い、何の煩いもなく何 の不安もなく、ねむの葉陰に〜このように苦しむこともなく、もっと自然に、もっと素直に、僕等 が愛し合えるならば。 〜ねむの葉は、夕べを待って、一日の、平和な、忘却の眠りを眠るだろ う。その小さなねむの眺めが、僕の心を悲しくした〜 「忘却の河」以来この作家の作品を読んだがこれはあまりに切なく美しい小説であった。もっ と若い頃にこの小説を読んでいたら、と今更ながらに思った。青春の美しい思い出になったか も知れない。
珠玉です。
基本的に恋愛ものが苦手である。 男女=恋愛という図式に嫌悪感がある。 実際に恋情を抱くのが異性だったとしても、異性だから好きになったで終わったら身も蓋もない。 本編はサナトリウムの患者である語り部が、同じ患者の主人公の日記を託されて、それを読者は読む形式である。 好いた惚れたの世界、性的な欲求、そういうものに不慣れな若い世代および時代の、痛々しい思いが綴られている。青く清らかな恋愛小説であろう。 しかし。 藤木ってやな奴だなあ。 汐見も、とっとと押し倒しちゃえばいいんだよ!かぁーっイライラするぜ! とか思ってしまう私は、もはや大人なんでしょうな。いや、ほんと、汐見の気持ちは痛いくらいわかるんだけど。


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通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー数:5

くちコミ情報
愛は持続すべきものである。
 僕にとってこの本が魅力的なのは、著者が自らの内面を徹底的に見つめ、自らの魂の成長の軌跡の中で「愛」を捉えようとしているからだ。    高校を卒業してすぐの頃、初めてこれを読んだ。自らの心が覗き込まれているような気がして、夢中になった。38歳になった今、再読し、懐かしい自分に会った気分だ。  福永武彦が、これを書いたのは40歳頃のようだが、青年期の魂について、これほど手に取るようにありありと描写できるのは驚異的な気がする。    著者の文学観も少し披露され、興味深い。「文学は実人生の中におけるワクチンのようなものだ」という意味の文があり、少し物足りないような気がしたものだが、逆に、これは著者の誠実さの証であるように思われる。  時折挿入される、掌編も魅力的で、「細い肩」など少し膨らませれば、いい映画になりそうだ。  今回再読し、心に響いたのは以下の文である。 「愛は持続すべきものである(中略)常に酔いながら尚醒めていること、夢中でありながら理性を喪わないこと、イデアの世界に飛翔しながら地上を見詰めていること、−愛における試みとはそうしたものである。その試みは決してた易くはないが、愛はそれを要求する。」    
名著
いつでもいい。どのページを開いてもいい。 目を落とすと、伝わってくる。 愛は、孤独をまぎらわすためにあるのではなく、孤独の中に身を投じるためにある。 人は決して、孤独から逃げられない。 だからこそ愛には価値があり、孤独を忘れたとき、愛の価値は失われる。 孤独に身を投じることを怖れず、他者と出会うために恋愛に踏み出そうとするすべての人にとって、本書は救いであり、道しるべである。
恋愛に悩む者の羅針盤
純粋に『恋愛とは何か?』ということが記されています。 私は自分が恋愛で悩んだときに何度も読み返してきました。 p 唯一無二の絶対的『恋愛観』ではないかもしれませんが、『こうありたい』と思える、力強い恋愛観が示されています。 p 高校の国語の授業で読んで以来、結婚した今(三十路)もなお、私に対して問いかけてくる書籍です。
恋の哀しみを知る者へ
飾らない言葉。スマートさ。でも誠実さ。恬淡としているところが「惜しみなく奪ふ」なんかとはよほど違う。若輩にもさらさら読める。 これは単なる愛の賛美ではない。人の「孤独」を踏まえた、どちらかというと切ない雰囲気、語り口。 だが愛は人の孤独なるがゆえにこそ強い。そして、そこに悲哀が存在してこそ、美はいっそう洗練されるもの。 p これをぜひとも、自分は十代のころに読んでおきたかった。ぜひとも、街のへらへら坊っちゃん諸君に読んでいただきたいものだ。 英語にはt y to-と、t y-ingというふたつの用法がある。本題「愛の試み」とはまさに後者、即ち「弛まずそれを為し続ける、たといそれが叶わねど」という意味に他ならぬ。
試みとはためしにやってみるということではなく、そこに自己の孤独をいっそう苦しくする危
ッセイと挿話による,愛の形而上的思考をつづった清新な作品。 p 日常において人は愛という言葉を使うが、その本質が何であるかと考えたときに、ぜひ読んでもらいたい書。 この「愛の試み」を読むことで、新たに愛の深い意味を知ることができるだろう。 挿話も秀逸で、福永作品の香りを感じる。特に「細い肩」・「砂浜にて」はお勧め。 p 愛は、他人の魂を所有するのが目的ではない。 愛の試みとは、人が持つ生まれながらの固有の世界(孤独)を豊かにする試みである。


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¥ 540(税込)
通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー数:8

くちコミ情報
草の花ほどは引き込まれなかった
う〜ん最後まで読んだ感想は魅力的な人物がいなかった。 登場人物全員が過去の記憶や出生に囚われており、音楽で言うとずっとマイナーな感じで話が進んでいきます。 ストーリーの始まり方も草の花ほどは衝撃的でなくて引き込まれなかった。 娘が囚われていた出生の悩みも結局は勘違いって落ちもなんか軽い感じがしました。 最終的には娘二人と父親の関係は良くなっていくのですが、母親が死んでやっと関係が良くなるって現実的と言えどなんか暗い気持ちになりました。 ほんとなんか普通の人たちしかいませんでした。
忘却は死か
人気作家、池澤夏樹氏のご尊父にあたる作家。現代作家を中心に読む読者であっても、興味をそそられるところだが、そのストーリー、表現、構成において、完璧な調和。読後には、人間のはかなさのようなものが心にのこる。美しい一遍。
人生の意味を真摯に問うた傑作
ある家族の物語。 悲痛。 テーマは愛、憎しみ、罪、贖い、魂の救済。 父と長女、 父と次女 この2関係が、それぞれの形で最後に和解に到達してくれたことで救われた気持ち。 この終わりでなかったら、居た堪れなくて読後感最悪だったかもしれない。 それにしても、果たして、人は救われることなどあるのだろうか。
名作は、草の花だけではない。
福永武彦。偉大な作家である。 彼の作品をいろんな人に読んでもらいたい、 知ってもらいたいと、切に思う。 だが、彼の作品の数々が絶版の憂目にあっている。 現状は厳しい。 そんな中での「忘却の河」復刊。 名作は手元に置いておきたいものである。 本屋に並んでいて欲しいものである。 「死の島」の復刊も願う。
静かに圧巻
帯には、『人生に二度読む本』とあった。かつて、この作品をタイムリーで読んだ世代の為に、再び文庫本として世に出たのならば、初めて読んだ私も出版社の良心や美意識をちょっとばかり感じました。ベストセラーのリストを見ては読みたくないかも、の連続。書店では一冊も手にする事無く帰宅する事も少なくない。ネット書店を通じて、気軽に手にしたこの一冊の余韻に浸っています。家族それぞれの秘めた胸の内をもしそれぞれが知っていたならば、ここに出てくる家庭の様子も違っていたかも知れないのかな?けれども、多くを相手に語ることはないけれども、心の中での語りの部分、その深さに愛情を感じました。空気を読めと実生活の中で言われても、何でよ〜!と思ってしまいますが、逆に語らない、その部分を慮っていく事も大事なんだなと思いました。


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くちコミ情報
日本初期
こじきと、にほんしょきを、これが、たからです。 しんじつは、ときがかわると、まったく、べつの、みかたがされます。 いのりと、しんじんが、いちばん、たいせつです。
古事記の全体像を把握するには最適な1冊
平易な訳である上に入手しやすい価格設定(記紀関連の本としては)になっているのが嬉しいですね。 現代語訳のみで難しい注釈などありませんので古事記の全体像をざっと把握するには最も適した1冊ではないでしょうか。 この本を手始めに記紀(古事記・日本書紀)を学び始めるとアレルギーにならずに済むかもしれません。 私はこの本を読んでいろいろ興味がわいてきてもっと専門的な本にも手を伸ばしています。
楽しい
固有名詞が多すぎて少しうんざりするけど、イザナキとイザナミが子供をつくったり、ヤマトタケルがヤマタノオロチを退治したりと楽しいエピソードが盛りだくさんで、勉強にもなって一石二鳥です。


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福永武彦 (ちくま日本文学全集)
 
¥ 1,020(税込)
¥ 350(税込)
ジャンル内ランキング:364,355位  
カスタマーレビュー数:1

くちコミ情報
バランスのとれた一冊。
学生時代、卒業論文のテーマに福永武彦を選んだのはもう10年以上前。 いつも福永氏の小説や評論をバッグに入れて持ち歩き、 幾度となく読み返しては鉛筆で線をひいたり 細かく書き込みを入れていったり・・・ p この本もその当時の思い出の一冊。 福永武彦の小説を読み解くとき、 キーワードになりうるであろう単語がいくつかあるように思う。 「愛」「孤独」「生」「死」「水(河・海)」・・・ 本書には、これらをテーマにした小説がバランスよく収録されている。 時を経てなお、私の本棚に納まっている理由もそこにあるのだろう。 p 一般に長編『忘却の河』が最も小説として完成度が高く、 福永氏の代表作であるといわれるが、 例えば本書に収録されている『心の中を流れる河』も 短編ながら実にまとまりの良い作品だ。 愛を失った女性の孤独と、若さに裏打ちされた青年の情熱。 登場人物の視点が入れ替わり、時に交わり、 小説の展開に広がりと奥行きをあたえてゆく。 まるで音楽でも聴いているかのようなこの構成は まさに福永氏の意図したものである。 p 全体の文章は平易でありテーマもわかりやすい。 短編になるほど、時に表現が直球になり過ぎる感がなくもないが、 小説に込めようとしたメッセージを汲み取るには むしろこういった作品群からの方が入りやすいかもしれない―。 そんなことを感じさせてくれる一冊だ。 p ----------------------------------------------------------- でも、正直、「詩人」としての福永武彦は 個人的にはあまり好きになれないんですけどね(笑)


玩草亭百花譜―福永武彦画文集〈中巻〉 (中公文庫)
 
¥ 999(税込)
¥ 3,800(税込)
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玩草亭 百花譜―福永武彦画文集〈下巻〉 (中公文庫)
 
¥ 999(税込)
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通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー数:1

くちコミ情報
今昔物語はこんなに面白い!
ある意味衝撃でした。 日本の昔の話なんて古めかしく文語体で読みにくいだけ・・・ なーんてもう言わせない!! 著者が面白いと感じたものを集めてあるらしく、読み応え十分! しかも分かりやすく読みやすい。 中にはとんでもなくエッチな話を普通に淡々と語られてあったり、だからこそ面白い!みたいな(笑) カテゴリーは「世俗」「宿報」「霊鬼」「滑稽」「悪行」「人情」「鬼譚」「仏法」となっており、話のタイトルは「雨宿りの宿に一夜を契る話」「蕪とまじわって子ができる話」「三善の清行が空家へ引っ越す話」と分かりやすく興味津々の内容が史実に基づき語られている。 日本にはこんな話もあったんだ!と再発見するもよし、京の雅なる闇の世界に舌鼓を打つもよし、「こんな昔話知ってる?」と得意気な顔をするもよし、何かと価値のある一冊です。


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くちコミ情報
苦味を含んだ甘み
 大林宣彦の映画「廃市」は 彼の映画の中でも指折りの傑作である。柳川を舞台とした小品映画ながら 濃密な作品である。柳川の風物を美しく撮影しているので これを見ると柳川へ行きたくなる。小生も20年前の夏に寝袋を担いで出かけたものだ。バス停のベンチは寝ていても固いし 蚊が多いのには閉口した。  映画の原作である本書を読むことはごく自然な流れである。大林が愛読しているという福永武彦の短編「廃市」は 正しく映画「廃市」の原作であった。というよりは 映画が原作に忠実だったという方がフェアーであろう。  福永は舞台を柳川とは特定していない。しかし 巻頭においた北原白秋の「さながら水の上に浮いた灰色の棺である」という白秋の郷里柳川を評した言葉からみて 柳川を実質的な舞台としている点は間違いない。「廃市」という享楽的で退廃的な街を実にロマネスクに描き出している。そこを舞台として繰り広げられる人間達の滅んでいく様は しかし 実に美しい。一体 滅びに美学を感じる傾向は日本人には比較的強いと思っているが 本作は正しくその好例である。  プロジェクトXという番組があった。精力的な人間達の感動的なドラマであった。その一方で 滅んでいく人間達の姿も美しいものがある。我々も常にマッチョを目指すべきではないのかもしれない。「人生の味わい」という言葉を本作に充てるなら その味は苦味を含んだほのかな甘みにある。日本人ほど「甘み」という食感を上手に使う国民はいないと思う。「この魚には甘みがある」と良く寿司屋で聞く。英語に訳しようがない。  そんな味わいがある。傑作である。
染み付いた孤独
本屋で「草の花」が平積みになっていて驚いた。最近、書評でよく取り上げられているそうな。けれど、わたしは、福永作品で、文庫化されているものでは、断然、この本が好きだ。福永武彦は、長編より短編のほうがうまいのではないかと思う。とくに「夜の寂しい顔」の幻想的な作風が好きだ。福永武彦という人は、本当に孤独を美しく描く。 一時期、福永武彦を卒論のテーマにしようと、全集を読みふけったが、とにかくもう、みんな孤独だ。騒ぎ立てる孤独ではなく、みんな静かに寂しさを抱えて、とぼとぼと道を歩いていく。 この調子で、他の作品も文庫化してほしい。「韃靼」とか。
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死に対する穏やかな感情というか、もっと死を近しく感じているようにも思う。悟りや諦念といったものが全体的な印象。私的には「樹」における緩慢な幸福と別れが切なくて好きだ。
作家の美意識の結晶に思える作品
1959年と1960年の作品集から編まれた本書は八つの中短編から構成されている。作品はバリエーションに富んでいるため、福永武彦の作品に初めて触れる読者は混乱するかもしれない。 p  自分の印象で言えば、表題作「廃市」にあるような愛情の物語を書く作家が福永武彦の印象であり、もう一方の表題作であるような「飛ぶ男」や収録作品の「未来都市」のような前衛的な作品ではなかった。 p  しかし、文庫本でわずか50ページ程度の作品である「廃市」を繰り返し再読して、はたと気づいた。もし主人公達に違う未来があったとしたら、「未来都市」の結末が一つの解だったのではないだろうか。つまり福永の作品は表現が違っても、同じテーマを繰り返し扱っていると言うことなのではないだろうか。 p  ともあれ「廃市」は一読に値する。私には作家の美意識の結晶に思える作品だ。


新潮現代文学 31 (31)
 
¥ 1,264(税込)
¥ 400(税込)
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