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【くちコミ情報】
普段、詩集なんて読まない人も
筆者は1923(大正12)年に生まれた方でありながら、今の我々に通じる普遍的な現代詩を作り上げた。 いわゆる難解な言葉ではなく、「渋谷のパルコ通り」なんていう平易でリアリティあふれる身近な言葉で詩を書いているから、普段詩を読まない方でも楽しめるはずだ。 「おれは<物>だから/詩そのものだ/おれの言葉は所有権者どもの言葉ではない/おれはおれの言葉だけで生きてきた」 わかりやすく卑近な表現を使っているけれども、ユニークで毒を含んだ社会へのメッセージもあり、自己の内面への厳しい洞察もある。 ぜひこの自選詩集をまず読んでほしい。
田村隆一入門篇
『四千の日と夜』『言葉のない世界』『緑の思想』と初期三冊の詩集に長篇詩「腐敗性物質」「恐怖の研究」、後期の詩集から『奴隷の歓び』を収録。田村隆一の詩業の中でも最も重要な部分のみを抽出した好編集。田村隆一入門として最適な一冊。
誰もが「格好良い」という詩人
今までの苦悩の詩は、己の混沌とした内面を吐き出すものが多かったように感じたが、彼の詩はぐるぐると己の中を回っているのを、顎先に手を添えて、冷静に外から客観視しているような、そんな落ち着きがあるように感じる。理屈を抜いて、ここまで素直に初めから「格好良い!」と思えた詩は無かったかもしれない。素直に響いてくる彼の選んだことばのひとつひとつ。詩集の最後に向かうに連れて、なぜか鼓動が早くなり、すうっと現実へ帰っていくような不思議な感覚がある。 彼の詩は、素晴らしい技巧が凝らされた詩とは違う洒落気がある。ことば自体が作られて、飾り立てられてお洒落になっているのではなく、彼のことばの選び方がお洒落なのだ。特別に難しいことばを繰り返し使うわけでもない。日常の中、目の前に用意されたことばを摘み上げて、並べていくかのようである。勿論それは彼のことばへの拘りがそうさせるのだろうし、その並べ方も真似の出来ない彼のセンスなのだろう。「四千の日と夜」、「幻を見る人」、「にぶい心」、「奴隷の喜び」、数々の詩のタイトルだけでも、格好良いと思わず唸りたくなるようなものばかりだ。余計な装飾には頼らない、正に断言的でさっぱりとした男性的な美しさを感じる。 晩年に近づくにつれ、「するわけだ」、「そうなんだけど」、「だったっけ」などの独特の口語的語尾も、絶妙なリズム感を生み出していて、おじいちゃんになった田村隆一がのんびりと呟いている姿を想像してしまう。
日本戦後詩
「一篇の詩が生まれるために、われわれは殺さなければならない 多くのものを殺さなければならない 多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ」という有名な句、そして「言葉なんかおぼえるんじゃなかった 言葉のない世界 意味が意味にならない世界に生きていたらどんなによかったか」「はじめに膝から折れるように地について彼は倒れた、駆け寄ってきた人たちのなかでちょうど私くらいの年ごろの青年が思わずこんな具合に呟いた「美しい顔だ それに悪いことに世界を花にごとく信じている!」」等、作品中に散りばめられたこれらの言葉の数々。アジア太平洋戦争後の瓦礫の中で産声を上げた日本戦後詩はその後あまりというかほとんど発展せず停滞したままであるが、その出発点にこの田村隆一なる人物が存在していたという事実によって辛うじて「日本戦後詩」というジャンルが成り立っていると言えるのではないだろうか。俗っぽい表現になってしまうけれど読んでいて時に痛快で時に落ち込み、また面白いと感じられる貴重な詩集である。
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【くちコミ情報】
やがて哀しきポノルグラフィ
徹頭徹尾、ただひたすら「ナニをいたしている」小説。ありとあらゆるパターン、テクニック、現象などが網羅されている。 そこに至る(あるいは至った後の)エピソードに、あのディケンズさえもが描けなかった(あるいは、描かなかった)19世紀ロンドンの真実がある。「ヴィクトリア朝時代の裏面史」と呼ばれる所以である。 丸谷才一が「傑作だ。彼は天才だったのだ」と言った文体について、開高健は「ロココ様式の家具ばかりで埋められた部屋に、ふいに一つ、北欧風の無飾の、材質の豪奢と機能だけで設計されたモダン・デザインの椅子がおかれたかのようである」と、これまた非の打ちどころのない寸評でまとめている。 なお、著者は匿名だが、ヘンリー・スペンサー・アシュビーであることが明らかになっている。アシュビーについては『もう一つのビィクトリア時代』(中央公論社)に詳しい。
そうか、これダイジェストなんですね
本邦の古典的ポルノは芥川龍之介(『赤い帽子の女』)や永井荷風(『四畳半...』)に代表されるように小説家が中心となっていましたが、海外、特にフランスの古典ポルノはどちらかといえば詩人が活躍する(アルフレッド・ド・ミュッセ、ギョーム・アポリネール)分野でした。本書は英国のAnonymousなので詩人かどうかは判然としませんが、詩人の田村隆一氏が翻訳を手がけられているのはまことに適切であったでしょう。 p 本書の特徴はビクトリア朝を背景とする「微に入り細を穿つ具象ポルノ」であることです。一人称主人公の少年期から老年までの間のありとあらゆるSEXをこれでもかというぐらい丹念に描いており、そのヴァリエーションと粘着的な描写は他の追随を許さないものになっています。 p さて、同じ英国の時代背景で多様な手法を描いた酒見賢一氏の『語り手の事情』もすばらしいポルノグラフィですが、こちらは勝れて観念的に仕上がっており、本書と好対照をなしています。本書に興味をひかれた方は、ぜひ酒見氏の小説とも読み比べてください。
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無頼漢とはなにか
~一般人とは一線を画す人々を僕たちは好む。 自分にはなれないから、その人たちに僕たちの希望を託す。 p 僕はこの人をABC殺人事件の訳書から、知った。 クリスティの訳を読んでいて、日本語がきれいだなーと思ったから、 興味を持って調べたら出てきた。 無頼漢であった。 酒飲んで、世界を飛び回っている。 ジプシーじゃん。 かっこいいじゃん。 p ~~で、現代詩文庫が出たので、見てたら、田村さんが出てきた。 読んだ。悔しい。こんな生き方かっこいい。まねできない。悔しい。 ということで、気持ちがほぐれます。 ぜひ、うらやましく思ってください。~
おすすめ
田村隆一。ひょっとすると教科書で見かけた人もあるかもしれない。写真も掲載されていたかもしれない。彼の晩年の精悍な表情は彼が歩んできた道を感じさせた。長く険しい道だ。彼は、戦後、廃墟のなかでもう一度、美を見つめなおし、言葉というものと徹底的に闘った現代詩人の代表格だった。軽妙で見事な文章だが、書かれていることは大事なことばかり。何回読んでもぼくたちは感動し、そして、ああこんな時代があったんだなあ、と思う。酒場で見かけた詩人たちの喧嘩や、奇声をあげる主人、そして酒を愛すひとたち。なんだか当時―一番詩が熱かった時代―に戻ったみたいだ。また、彼の詩を読むときは、なんだ目頭が熱くなってしまう。(これは言いすぎかも。)昔、戦争があって、詩人達が生まれて、それに熱狂した読者たちがいた。この本に書かれたコトバはどれもこれも復活させたいのばかりだ。
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【くちコミ情報】
かっこ良すぎるぞ田村隆一
この著者の詩もかっこいい。エッセイもかっこいい。そしてその風貌も。数年前に亡くなったのが本当に残念。お酒と詩とミステリー(クイーンやクリスティ)そして銭湯が好きな女子大生は読みなさい。田村隆一は戦後現代詩のキムタクです。
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