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池澤 夏樹
¥ 500(税込)
通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー数:28
【くちコミ情報】
マイベストストーリー
淡々とした静かな展開。 かなり大それた犯罪者なのにすっとした佐々井の姿。 何にも捕らわれないその生き方が理想です。 多分20年ほど前に購入したから当時は新刊だったのですね。 手元に本を残しておくことの少ない私が今まで持ち続け、 これからも手放さないと思う一冊です。 自分の生き方の根本になっていると思います。
必読
とっても、刺激的な本。 出だしも。価値観も。 いつも手元に置いておきたい本の一つ。
佐々井とは誰か
池澤氏は、本書の『スティル・ライフ』を、日野啓三氏の『Living Ze o』というエッセー集に触発されて書いたと公言されていますが、主人公の話し相手となり、科学について語り、最終的に宇宙人として比喩される、佐々井という人物は、何やら日野啓三氏がモデルとされているような気がしました。因みに、「向う側」という単語もさり気無く作中に用いられていますが、これは日野氏のデビュー作のタイトルです。 何はともあれ、『スティル・ライフ』にせよ、『ヤー・チャイカ』にせよ、簡素な文章を用いた、何処となく懐かしく、ひっそりと静まりかえった世界観は、確かに居心地は良いですが、何か今ひとつ、筆者独自の核となるようなものが希薄であるという印象を持ちました。それでもまあ、難しい思想やら哲学やらを省いて、美しい短編映画のような世界に浸りたいという気持ちの時に、本書は文学としてその役割を果たしてくれるということは、凡そ間違いありません。
うーん
昔、夏樹静子とごっちゃになっていたことがある。最近まで女性だと思っていた。 しかし、素晴らしい。現在の芥川賞で前衛の文学を評価してくれるのは山田詠美と池澤夏樹さんだけで、そんな人の書いた作品は、やっぱりすばらしかった。 科学、と結び付けられて語られるているようだが、果たしてそうなのだろうか。この人の文章は何気に壮大だ。たった数十センチ四方の紙に描かれた文章だけで、宇宙の果てまでぶっ飛ばされ、雄大な気分に触れる。科学に関する会話があろうとなかろうと、それは変わりないのではないか。宇宙まで飛べるのは文章の力。 人間が宇宙に行ったのは科学の力だが、宇宙へ行こうという発想は、たぶん、科学ではないから。 さて、表題作の芥川賞受賞作、「スティル・ライフ」もいいですが、個人的には「ヤー・チャイカ」のほうが上ではないのだろうか。人間が自分以外の存在にしずかになろうとしている瞬間を繊細に描いている。老婆になっても恐龍に餌をあげつづけようとするカンナの描写がうますぎ。
”芸術的に、そして哲学的に意味づけられた科学”で織られた
「大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界とのあいだに連絡をつけること、一歩の距離を置いて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。」 この冒頭の文に、 「スティル・ライフ」というストーリーの 魅力が凝縮されている気がする。 ”芸術的に、そして哲学的に意味づけられた科学”で織られた 美しいストーリー。 雲のような霧のような小説で、繊細な粉のように、 読んでいる自分に溶けていくけれど、 その溶けたものがどれなのかがわからない、そんなような すごく不思議な感じだった。 この小説があたしの中にどう溶けたのか まったくわからないけれど、 もう一度、いつかもう少し大人になったら、読んでみようと思う。
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【くちコミ情報】
ここではなく向こうに
「向こう側」と対話する人間にまつわる、ふたつの物語。 出てくる人々は、地に足のついていないような浮遊感を持って日々を過ごす。 「星に降る雪」では、主人公はニュートリノの降る宇宙、雪、死んだ友人のメッセージを待ち、「修道院」では、彫刻家が修道院を直しながら、いなくなってしまった友人の魂と対話を重ねる。 ひさびさ、「スティル・ライフ」以来の、「ここではなく向こうに目を向けた人々」の話で、個人的には好きだった。 池澤氏は、命への賛歌よりも、ちょっと浮世離れした人の物語を書く方が似合っているような気がする。
帰ってきた
池澤夏樹の初期の作品、「スティルライフ」が一番好き。透明感、浮遊感など。しかし、その後、エッセイや評論が増えてきて、なんだか、初期の感じがなくなってきたと思っていた。 今回の作品で、また、「スティルライフ」の頃の雰囲気が見られて、嬉しかった。空気感が全く同じ、というわけではないのは、この人が成熟していったからだろうと思う。だから、初期の作品のファンには、お勧め。
魂の解放を求める人々を描く珠玉の2篇
2篇収録。おすすめです。ちょっと甘めかもしれないが星5つ。 特に修道院の出来が良かったから。 「星に降る雪」 雪の神岡にある、ニュートリノ望遠鏡を有する地下天文台で働く田村は、かつて雪山で友・新庄を失った。 6人のパーティは雪崩の遭い、新庄のみ命を失った。 同行していたが生き残った新庄の彼女・亜矢子(恋人というには期間が……)が田村を訪ねてくるところから物語は始まる。 生と死のはざまを垣間見てしまった二人は、それぞれ微妙に異なるが抱えた心の闇を解放できずにいる。 それは見てしまったものにしかわからない、禁忌に触れたものにしか理解できない領域の「闇」かもしれない。 田村のココロが解放されるのはいつのことか? 我々の魂も物語と一緒に旅をする……。 「修道院」 オフをクレタ島で過ごす「私」が出遭った修道院。 土地の老女が語る50年前の物語。 罪を背負った男の贖罪の日々に、そもそものきっかけとなった美しい女が村に現れ更なる悲劇を生む。 ミステリアスなストーリイ展開と、グイグイと物語に惹きこんでいく池澤の文章が素晴らしい。 寝食を忘れて一気に読ませるだけの力が宿っている。さすが芥川賞作家! 物語の雰囲気は、浦沢直樹の「マスターキートン」や「パイナップル・アーミー」に出てくるエピソードのような感じがある。 登場人物たちの造形がしっかりしており、それぞれの心の闇は深い。 久しぶりに内容の充実した作品を読むことができた喜びに満足!!
待っていたものについて、神について
小編一編、中編一編。どちらも、人智の及ばぬものについての物語。 「星に降る雪」は日本の話。 神岡でニュートリノの測定の仕事をしている男が、 雪崩で死んだ友人から何を教えてもらい、何を目指しているのかを友人の元彼女に話す話。 男と、元彼女との人生への向かい方の違いが鮮明。 自分は男の方の考え方が好き。 どんな考え方か、一方、元彼女はどんな考え方なのか、 それは、それこそ読んで感じて下さい。 ・・・このあと、この男の人がどうしたのかなぁ。 「修道院」は、なんだか説話を聞いている気分になってきます。 こっちはクレタ島とアレキサンドリアの話。 ふらりと村に住み着いた男が、一人で荒れた修道院を修繕する。 それには理由があって・・・という話。 しっかりオチがついてます。 語り手の「私」が宿の女性に目をしっかりと向けているのが、最後まで読んだとき、 とてもいい読後感を与えてくれました。自分もこの人いいなぁって思いましたよ。 どっちも出だしに少し戸惑うのですが (名前が多く出てきたり、「私」という人称に慣れなかったり)、 話が転がり出すとめくる手が止まりませんでした。
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【くちコミ情報】
少しスピリチュアルな人生の旅について
「すばらしい新世界」の登場人物が巡る人生の旅を軸に、社会の活動と科学の共存に ついて模索した著者のアイデアが展開されています。 前作で中心になっていた風力発電を一方的に良しとするわけでもなく、科学技術を 悪とするわけでもない。 本書で読むべきは主人公達が出た人生の旅において、静かに、そして真剣に自分と 向き合う姿勢に現代社会の消費姿勢に対して救いを求めた、精緻とは言えないまでも、 ある程度まで高めれた池澤夏樹の世界観ではないかと私は思います。 ただし、そうは言っても小説ですので、当然に過ぎる結末が随分と早い段階で 推測できてしまい、安心して読んでいられますが、一方で予定調和なストーリー 展開に物足りなさを感じてしまうの面もあり、やや残念ではあります。
失速なのでしょうか
落胆。 以前の小説では、あれほど登場人物が、特に女性が魅力的に描かれていたのに、この小説には惹きつけられる人物がいませんでした。林太郎さえも、です。 人生の苦しみを乗り越える過程で、あまりにも都合がよすぎることに助けられてしまうのが、冷徹に事実をみつめて論評を書く池澤夏樹らしくないと感じました。
長編小説という媒体の持つ豊かさを感じさせてくれる小説
長編小説という媒体の持つ豊かさを感じさせてくれる小説だと思う。 共にこの小説を読み終えた友人と、語り合うとすると、次から次へと話題が出てきて、とまらないんじゃないかと思います。環境問題について話してもいいし、中年の恋や、生きる意味や、仕事でのやりがい、小説の構造、作者池澤夏樹、農業、共同生活、フランスやスコットランドの風景、スピリチュアルなものといった話をしてもいいし、最後の場面でのアユミの決断や、個々の場面での登場人物の行動・決断について、意見交換をするのもいいと思う。結局人生は、いつまでも自分探しの旅なんだねって確認し合ってもいい。 友人と話をするのと、ブログを書くのは似ていて、この小説について書くことはいくらでもある。何を書こうかとしばし考え、この贅沢な悩みを生む、長編小説の芳醇さそのものが、読後の印象として一番強いものなのかなと再確認したところです。 普段目にすることができない、ヨーロッパのコミュニティやエコロジカルな人々との語らいに登場人物と共に「参加」し、静かな部屋の中にいながら、多くを経験し、考え、豊かな時間をすごすことができました。 池澤夏樹の小説・評論・エッセイは、初期作品から全部読んできていたのだけれど、ここ2・3年ご無沙汰していました。同時代の小説家やミュージシャンとは、ある時期自分と波長があって、作品が出るたびに同時に読んでいくような幸せな関係がしばらく続き、でも、どこかで、関心のずれがうまれてお別れするってことになるのが常。でも、幸いなことに、池澤夏樹の文書をまた読みたくなりました。今回は、次回作を待たずに、ご無沙汰していた2・3年の作品をまとめて読めるのも、ちょっと幸せです。
論理的展開がここまでないなんて・・・??
人に話しながら自分の考えをまとめる人がいます。この著者はそういった人とは両極端に位置する立場だと20年以上認識していただけに、残念至極です。思考や文章をペーパーより先にPC上で公開することの影響でしょうか。人物像は不明確だし(特に美緒)、登場人物の思考の流れの展開が中途半端すぎて、どこまで著者は読者の想像にゆだねているのか首をかしげてしまいます。 終結部があまりに保守的なのも個人的に落胆しました。パックスを初めとする様々な家族形態について壮大かつ真剣きわまりない試みを長年続けているフランスに滞在する著者ならではの展開かと期待していたのですが、これじゃホームドラマです。
不自然な設定が作品世界を
つまらなくしている。「エコ」な生活をすることを通して「(妻ではない)自分」に近づいていくアユミ。彼女には、「8桁に近い遺産」が舞い込んでいたので、思いつくままにヨーロッパを放浪できる。ヨーロッパの「先進的」なエコライフの解説書めく部分が多いことも気になるが、物語を絵空事にしない力を読者は求めているのに、『きみのためのバラ』といい、本作品といい、読んでいて、こちらが冷めてしまう。美緒の人物像もよくわからない。描ききれていないから、人間として、存在感を感じられない。 期待して、最後まで読んだけれど、残念。
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【くちコミ情報】
池澤夏樹のバックグラウンドと旅の面的思考について。
「旅」という切り口で池澤夏樹を取り巻く人々とのインタビューや対談からなる数章と、 池澤夏樹による初出が2000年以降の雑誌・新聞への寄稿されたエッセイを中心に 本書は構成されています。 池澤夏樹の小説をご存知の方は、特に「おびひろ1950」を読むと「こういう背景で 池澤夏樹の文学は出来上がってきたのね」ということが、しみじみと伝わってきます。 押し付けがましくなく、あくまでも律儀な文体で綴られる文章は、遠く知らない 土地であっても私達へ旅情をそそり、自分が旅して想像できる土地へと誘ってくれます。 また、本書が池澤夏樹と知るきっかけとなった方も、「異郷の書架−池澤夏樹著作 全ガイド」の章を読んでいただいて、本書と併せて興味の湧いた書を手にとって いただければ、旅の自然・文化・歴史といった面的な捉え方について少しずつ親しむ ことができるのではないかと思います。
池澤夏樹ファン必読の一冊
池澤夏樹は自分のことはあまり語らない。 ミクロネシア、ギリシャ、ハワイイ、 沖縄、そしてフランスと旅をしながら あるいは住居を変えながら そこを舞台にした物語やエッセイや 評論を書いているけれど そこで感じたことを書いているだけ。 自分のことではない。 それがこの「池澤夏樹の旅地図」では 過去への思い、なぜ旅に出て、住居を変え、 それが自分にどんな影響を与えたのかを語っている。 さらには幼少時代を過ごした帯広のこと。 「幸せな幼少時代だと迂闊にも 勘違いしていた子供だった」と表現するのが池澤夏樹らしい。 「いるべきでない場所にいる」という矛盾を 抱えた彼は、特に日本との折り合いが悪いという。 その彼が日本を離れたときに 書くべきことをみつけ、小説を書き始めた、 という始まりに興味を覚える。 これまで多くの著作を愛してきたこちらとしては よくぞ日本を飛び出てくれた、という思いがする。 その土地で感じること、 それを言葉にすることの連なりが感じられ、 ファンとしては嬉しい一冊。 また池澤夏樹が選ぶ「旅本」「旅シネマ」 「旅音楽」はチェックしたくなる項目。 『読書癖』にも大いに影響を受けたのを懐かしく思い出す。
「楽園の曖昧な根拠」
「帰りそびれた観光客」「楽園の曖昧な根拠」はとても刺激的な文章でした。 簡単に言うと「ここはいいところです。あなたが來るとここのためによくないから来ないで下さい」みたいなこと(と本人が要約していた気がするけど、その箇所を見つけられない)を言っています。 これは自分が旅を考えるたびに直面する感情をうまく言い当ててくれていた文章でした。 しかし、この作家は旅を勧めている。 でも中々この気持ちを持って旅に突き進むのは、パワーがいることのような気がする。 それでついつい家で過ごすことが多くなっている。 どっちがいいんだかと呆れますが、とりあえず体力をつけたいなぁとこの本を読んでいて何故か感じました
旅本
あ〜もうっ、疲れたよー(u_u) いっそ、旅に出たいーー。 どこか遠くの国へっ。 だけどっ、だけどっ、だけど〜〜 行く暇もっお金もないし〜、 なんだかんだで行けないよ〜〜。 ウェーン・゜・(≧д≦)・゜・ そんな時に読むのがぴったりなのが、 芥川賞作家で、ギリシャや沖縄に長期滞在経験を持ち、現在はパリ郊外に在住されている 池澤夏樹(いけざわ・なつき)さん著作の その名もズバリ“池澤夏樹の旅地図”です〜〜!! この本、旅地図という割には地図はほとんどでてきませんので地図を期待してはいけません。 エッセイやインタビューが中心になってますが、美しい写真をぱらぱらめくって見るだけでも、かなり旅感ア〜〜ップ(≧▽≦)bです。 人生は旅のようなものと言う人がいますが、この著者にとっては旅が人生の中心にあるみたい。 まさに、旅があって、そこから仕事も生活も発生していくって感じです。 読んでると、そんな生き方もあるのね〜〜と、 ぽ〜っとしちゃいます。 日常の細かいことが薄らいで、 自分も旅に出ているような気分になっちゃいます。 またこの著者、作家さんで翻訳もしたりしていて、かなり読書熱が高いです。 ただ読むだけじゃなくて、関連するものを集めたり調べたりと、熱さがひしひし伝わってきます〜。 それで、 “池澤夏樹が選ぶ「旅本」”というコーナーでは、 著者が出会い旅のきっかけにもなったような本が、詳しく解説されています。 旅だけじゃなくて、読書もしたくなっちゃいます。 他に「旅シネマ」、「旅音楽」のコーナーもあって、オズの魔法使いは旅物だったのね〜〜、と妙に納得してしまいました。 あ〜、旅にでたいっっ、という気分はさらに高まってしまうかもしれませんが、 癒されることまちがいなしっ。 この本きっかけで、旅に出るっていうのものもいいかもしれません(*^-^*)/
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【くちコミ情報】
ぼくのイチオシです。
僕らは社会や文明や国や宗教や民族など、様々なモノと関係して生活をしている。 日常生活を送っていると、ーーー特に生活が必要以上に便利になった日本という国に住んでいると、世界が小さくなってしまう。 情報は世界と繋がっている。でも、そこには深みがない。人の、土地の、臭いがない。 観念化された生活。 大きな不満がないから考えない。それは、しあわせな状態なのだろうか。 ほとんどの日本人のなかに神はいない。それはそれでいいと思う。僕の中にも神はいない。でも、自分より大きな存在がいないということはいいことなのだろうか。 人間のできるとこは、実はとても小さく僅かなもの。 そう思えることは幸せなことではないだろうか。 そんな思索にむかえるヒントがちりばめられている。 すばらしくて新しい世界が拓ける言葉が本書にはある。 この本に出会えたことは、しあわせ以外なにものでもない。
カジマヤー計画と聞いただけでゾクゾクしました。
池澤氏らしく、物語は沖縄で始まり北海道で終わります。その間はネパール奥地のナムリン王国が舞台。風力発電技師の林太郎がナムリンの風を灌漑エネルギーに変えるためにネパールに出張します。これがカジマヤー(琉球語で風車)計画。 といってもプロジェクトX"ヒマヤラの奥地に風車が回った"篇というわけではなく、物語はもっぱら林太郎と妻アユミとのメールのやりとりで、"現代の諸相についての二人の考え"が語られる展開です。例えば、「ボランティア・NPOと企業」であり、「インテリ世代の子育て」であり、「チベット仏教」などについてであります。 一つの夢のあるプロジェクトを縦軸に、異国でのエピソードをきっかけとした思索が横軸に交差して、爽快感とともに物語を読み終えることができました。池澤氏の物事を見る眼にまたしても共感している自分がおります。
風車とそれにまつわる社会の話。
風車好きは読んでみてください。 遠いネパールに頑丈な風車を設置する、という話です。 ネパールの山奥に風車(普段私たちが見慣れたものとは形が違うのですが)を立てるその姿を想像するだけで気持ち良くなってきます。 脇では、今の先進国の電気に依存した社会について、様々な語り口から語られていきます。 新聞連載だったため、1Pの情報量が多すぎるところはあります。 終盤、現地で修理する人を作るために主人公は理科の授業をします。 最初は「授業なんて退屈だなぁ」と思っていたのですが、えらく根源のところから始まる授業なので、ものごとを知ってると自分は思い上がっていたんだなぁと苦々しい気持ちになりました(笑)。
登場人物の価値観のぶれを楽しむ小説
一人の日本の技術者が、チベットの奥地に農業用の風車を立てる。主人公は、科学のかの字も知らない現地の人々に、風車のメンテナンスのための授業をし、主人公は、現地の人々が信仰している素朴な仏教に触れ、感銘を受ける。 というのがこの物語の大筋である。特筆すべきは、この物語がもともと読売新聞の連載小説であったことだ。というのは、この物語の連載の中で、素朴で純粋なチベット仏教のすばらしさを描いていたまさにその時に、同じチベット仏教であるはずのオウム真理教が地下鉄にサリンを撒いてしまったのだ。物語は一時脱線し、オウムについて、アサハラについての作者ならではの考察をくわえていく。事件の全貌がまだ見えない中で、作者はなるべく誠実に答えを見出そうとする。それがそれ以降の主人公の行動や思想に深みを与えたに違いない。もろ手を上げてチベット仏教万歳というのでもなく、俺と仏教は関係ないと突き放すのでもなく、彼らしい結論に達する過程は、物語というよりは一種のドキュメンタリーにも思える。
気に入りました。
作者の作品には、勢いや雰囲気ではなく、 論拠を持って読者に影響を与えようとするものが多い。 一方本作は、「登場人物の考えるプロセス」を記録しながら 比較的緩やかに作中の時間が進みます。 おかげで、登場人物により近づいた視点で読み進むことができ、 当然のように世界を享受するのではなく、 自分なりの世界を作ることへの参加に考えるきっかけになりました。 p これを機会に、未読の池澤作品も手にしてみたい。
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ヒトは誰に時を与えられたのだろう
実は最初はパラパラとめくって、エッセイ集だと思い込んで読み始めました。本編とは別の時期に書かれた短いメッセージが最初に収録されているためです。 で、本編はというと、人類の進化、文明という大きな流れについて考えさせられる不思議な小説です。途中の写真やグラフなどについていた「?」が、最後にそういうことだったのかと得心しました。「2001年宇宙の旅」を映画で見て点いていた疑問符が、小説を読んで「なるほど」とわかったのに似ています。 今は「ヒトに与えられた時」について一寸思索しているところです。
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【くちコミ情報】
ハワイイに続いて、バリへの扉になってしまうのか。
池澤夏樹の著作は「ハワイイ紀行」が最高に好きで、それ以外には「マシアスギリの失脚」とか「マリコ マリキータ」とか「バビロンに行きて歌え」とか「切符をなくして」とか「憲法なんて知らないよ」とか「池澤夏樹の旅地図」とか「南の島のティオ」とか「明るい旅情」とか「星の王子様(これは訳ものです)」とか「百年の愚行」とか「スティル・ライフ」とか「静かな大地」とか「イラクの小さな橋を渡って」とか「新世界へようこそ」とか「異国の客」とか読んだり見たりしてます。 (意外と読んでるな) ちょっと前に池澤夏樹の「花を運ぶ妹」を読みました。 バリを舞台とするお話です。 手柄を求める現地警察によってヘロイン売買でハメられて逮捕・投獄された日本人青年画家と、その青年を何とか救い出そうとする妹のお話です。 凄いと思った点は2つ。 ひとつはヘロイン中毒患者の心理描写。 多分、中毒患者の手記とか他にも同じようにリアルなものはたくさんあるのかも知れませんが、僕は初めてこういう描写を読んだので圧倒されました。 アッパー系ではなく、ダウナー系のアディクションについて「こういうことだったのか?!」と理性的にも納得させられちゃうのは池澤さんならでは。 そしてもう一つはバリの文化の読み解き。 ケチャ、レゴンダンス、ヒンドゥーの神々、それらを楽しみ崇めるバリの人々、それらを包括するバリの文化、それらをはぐくんだバリの海や自然。それらを「演劇的」という言葉で見事に表現してくれて、まだその土地を体験していない僕にも「すとん」と納得させてくれたのです。 やぱ、池澤夏樹さんてすげー。 というわけで、これを読んだらバリ島を旅したくなっちゃいました。 ハワイイ紀行でハワイイにはまって渡航は早十数回。 サーフィンのポイントも結構あるみたいだし。。。。。。。次、バリを狙っちゃおうかな。
「禁」書評欄読破後の購入。
ぜひ 事前に情報をあまり入れないで読んで下さい。 (途中読みあぐねたときには 後ろの三浦雅士解説を!)
奇想天外な傑作
作者の父福永武彦は,毎日出版文化賞を本業の小説ではなく評論 ゴーギャンの世界 で受けたが,息子の方はめでたくこの作品で受けた.そこで福永のファンとして,読んでみた.兄と妹が二人称と一人称で交互に現れ,この世のこととも思えない不思議な話をする.兄は画家だが,ヘロイン所持のかどで Bali で逮捕され,裁判で死刑になる可能性がある.妹は Pa is で旅行業者をしているが,兄を助けようと東京経由で Bali に行く.妹はこの島で奇妙な解脱体験をする.すると柳田國男の 妹の力 そのままに,事態は突然好転してしまう奇想天外な結果になって,めでたく収まる,と言う話.Bali の描写がまた美しく,読んでいて楽しい.私は村上春樹が苦手で読んで判った試しがないのだがこの作者の物は幸いにして判るような気がして嬉しい.もしかすると, 作者が物理出身で基本的な所で論理が通っているためか ?
楽園のにおい
解説にもありましたが、ほんとにむせ返るようなにおいがします。 p 甘くてすっぱくて湿っぽいのに埃っぽい けだるいバリの空気のにおいです。 p 池澤夏樹ファンですが、こんなに濃いにおいのする作品は 初めてではないでしょうか。 p 熱帯を舞台にしていても、今まではふわりと風を感じる 程度だったのに、まるでまとわりつくような感じです。 p テーマもストーリーもなかなかにヘビーですし、 兄+妹+両親の家族全員がしっかりみっちり 登場するからかもしれません。 p 人物対人物の関係の濃密さと背景の濃さがあいまって 池澤作品にしては濃厚な読み応えなのでしょう。 p もちろん、あの理系らしい、一貫したテーマと ストーリーの構成の妙は相変わらず素晴らしいです。 p とても面白かったですが!、池澤作品の、あのさらっと感を求めて 手に取るとちょっとびっくりするかもしれません。 p 実際に、初めて読んだのが、待ち合わせまでの時間を 喫茶店でつぶしてる時だったのですが思い切り遅刻しました。 p 軽くスポイルされてしまう感じです。
祈り
前に、須賀敦子の本の中で池澤夏樹の本について書いてあったので、興味本位で読んだ。読み始めると、長編にも関わらず読み終わるのが名残惜しかった。アジアと西洋という異文化の対比が、バリという場所から描ききってあったと思う。日本にあった“神話”も大事にしたいと思ったり・・・・。読み終わって、また遠藤周作の「深い河」が読みたくなった。扱う重さが違うけれど、「祈り」、「水(河)の流れ」、共通項があるような気がする。 初めに神父さんが登場するところがとても印象に残っている。☆四つというのは、終わり方がちょっと円すぎた気が。
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収奪か、保護か
大英博物館の収蔵品に触発されて、それが発見された場所へ出かける。 なんてうらやましい企画でしょう。 そうして完成されたこの本は、優れた紀行文であり、また優れた文明論でもあります。 発掘品を大英博物館に集めることは確かに収奪と呼ばれる行為かもしれない。 しかし、その時大英博物館に収められず、ブラックマーケットへ流出した遺物や、 保管管理の行き届かない地元の小さな博物館に収められてその国の内戦で略奪された例だってある。 それならば、政情の安定した国の、多くの専門家が修復・保管に携わり、世界中の人々に紹介されうる博物館に収められた品々は幸運であったとは言えないだろうか。 だが、そうした理屈は結局は先進国のエゴなのか。 大英博物館に収蔵品のないアボリジニの国で悟るこの紀行は、多くのことを考えさせられる作品です。
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架空の島国に重ねた日本論
オセアニアにある架空の島国(ナビダート)を舞台にした幻想的な独裁者小説。こう書くと、どうしても「族長の秋」等のラテン・アメリカ小説を思い出してしまうが、この作品に出てくる独裁者はラテン・アメリカの独裁者小説の主人公に較べると大人しく、血みどろのことはやらない。意図的かもしれないが、まるで日本の政治家のようである。(実際、主人公の師匠・竜造寺は日本の国会議員である。)劇中にずっと描かれている旧日本軍の侵略の記憶とODAを活用した日本の外交政策、日本とナビダートのような島国国家の政治のありよう、といった要素が、南の島のマジック・リアリズムとあいまって、独特の空間を作っている。長い小説なのに退屈せずに読めたが、気になったのは以下。 -1. 主人公が日本から即席ラーメンを輸入して大儲けするエピソードがある。この小説のように日本の小売店から買ったラーメンを輸入して販売すると、食料品が日本より遥かに安い途上国の場合、庶民には全く手が出ない値段で売ることになるので、少し設定に無理があると思った。 -2. 小説中、日本政府が南沙諸島問題等に対応するため、自衛隊の秘密基地をナビダートに置くべく画策する。また、複数の登場人物(日本人)が、米国覇権の終了後に日本が再び覇権国として羽ばたくことを語っている。が、この小説が出版された平成5年から10年以上が経った今、日本の外交は作者が懸念したよりもずっと及び腰だったことが判明しており(笑)、今の時代に読むとちょっと設定に無理が出てきてしまっている。 -3. この小説を発表した頃、作者は南の島の精霊、大きな力などが作り出すマジック・リアリズムを試みた作品を他にも書いており、この作品でもそのようなマジックが肯定的・絶対的なパワーとして取り上げられる。一方、この小説ではナビダートと日本が同じ島国として、特に政治システムが重ねて語られており天皇制にも言及されている。(鳥居が倒れたり、ケンペー隊が登場したりする。)でも、上記のようなマジックを持った「精神的中心」に支配されるナビダードの共同体システムは、突き詰めれば竜造寺のような男にとっての天皇制にも通底するものがあるだろう。マジックで日本のナショナリズムを批判する、というのは単に作者の南方贔屓である。 なお、この小説の中で登場する遺骨収集団のエピソードを読む限り、戦争の記憶に関しては批判一辺倒ではなく作者なりのバランスを取ろうと試みたようだ。が、単行本で入っていた日本国旗が燃える挿絵が、この文庫版では抜けている。何だか出版環境も窮屈になってきてるみたいだ。
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