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カスタマーレビュー数:5
【くちコミ情報】
コロッケについて思うこと
作家の多くが「自分の著作を広く紹介してくれる翻訳者に対して基本的には好意をもっている」のは事実だとしても、まずは「良い読者」たろうとする柴田元幸のスタンスに絶大にも近い信頼を寄せていく様が、特に付録のCDに収められた肉声のやり取りによく表れている。インタビューする者とされる者との距離が一挙に縮まる瞬間は、聴く者をもまた幸福な気分にさせてくれる。 また、9人目として登場する村上春樹は「自分のことを書くのは大変だから、コロッケについて思うことを書きなさい。」という投げ掛けで、彼の考える“物語の有効性”を説く。語りかけている相手は読者のようでいて、実は作家村上による、大学教授柴田への授業のようにも感じられて、この二人の関係性も暖かいものを感じさせる。 そして、蛇足ながら、8名の米国作家+村上春樹で「ナイン・インタビューズ」という書名に持っていったのは、サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」を意識して、というのは、ほぼ間違いのないところだろう。こんなちょっとした遊び心も、柴田元幸の魅力のひとつである。
レベッカブラウンがいい
柴田さんはすでに教授です。で、小柄なせいか、声のためか、大変お若い方のような感じ。 巻末のモノクロ写真(後姿のツーショット)をみるとその感が増幅されます。 むずかしい単語(例 nexus,pedagogical, pa allax まだまだたくさんでてきます) をつかってはなす作家たち. こんな単語憶えてどうするのか と授業でおもっている学生さん、こうして会話でつかう人種がいますよ。 英語はあまり速くはないとのコメントがみられましたが、作家によりけりです。 レベッカブラウンは早口だと思いました。でもわかりやすい。そして、中性的でかっこいいです。 内容は、知性的で洗練されていて、人気があって成功もした米国人の作家たちが 言葉を選びながらの話が主で、 それぞれのもつ「引き出し」をあけながらポンポンまたはゆったりとおもしろい 話が出てきます。 すぐにわかったらそれはそれでOK. 私の場合きいていて、単語でひっかかる。たくさんのpassive voca ula y と固有名詞(特に非英語圏の場合英語読みするとわからない)。 時間をかけてBGMのようにきいていると、輪郭が少しづつ はっきりしてくるけれど、最初は、長いので集中力が続かず断片的にしか理解できない。 2番目の作家とのインタビューは: 彼の「独演会」のようになってしまって対話とはほどとおい。1つのエピソードの 説明が結構えんえんと続いてしまうのである。 こういう、話し出したら止まらないアメリカ人、います。柴田先生もタジタジで、おかしい(・_・)。 この作家とは最後もまとまりなどなく、時間切れで、一応シュピーゲルマン氏の話の、 「あるピリオド」でおしまいです(+_+) これ1冊で、ある程度独学で、話を洗練したものにできるかなと、馬鹿な事を考えながら、 テキストをみたり会話を聞いたり交互にたのしんでいます。
これはすごい!安い!
CDのついた本は、学習教材ではもはや当たり前になっておりますので、 それだけで安いというのではありません。 この本の位置づけは、あくまでもアメリカ文学者・翻訳家の柴田氏が おこなったインタビュー集だと思います。ですから、英語・日本語対訳、 そのトランスクリプトという3通りの楽しみをそれぞれのルートで行えばいいのだと思いますが、ということは、アメリカ文学好きの人、英語が好きな人、 翻訳に関心のある人、リスニングの勉強をする必要がある人のどれかに当てはまれば、これほどすばらしい本はないということです。リスニング教材としていえば、いわゆる「高度な内容についての対話」ですから、TOEFLにも役に立つはずです。 他の方のレビューにもありますが、柴田氏の声が低くてかっこよく、英語がきれいです。ポールオースターの小説のあとがきに吉本ばななさんが寄せていた文で、オースターが柴田さんの英語をパーフェクトだと評していたというのがありましたが、うなずけます。すごくかっこいいです。 僕は駒場で柴田先生の授業を取ってたんですが、こんなに有名になる前でしたし、サボったりもしていて、声を覚えてなかったなぁ。
もっと聞きたい
ここに登場する10人(9人+柴田氏)の著作、訳書に親しんだ読者であれば、当然手にとりたくなるでしょうし、作者と柴田氏の信頼関係と、柴田氏のインタビュー技術の高さによって、短いインタビューながら作家の文学観を引きずり出すことに成功している好著です。 p 私は、カズオ・イシグロ氏が、作中の主人公にどのレベルの信頼性(信用できる語り手)を与えるべきか、という点について語っていることが、非常に興味深かったです。 p 但し9人のインタビューが、英語と日本語の併記で記述されているので、一人あたりのインタビュー分量は、ファンにとっては少ないと感じる人が多いかもしれません。その点はしかたないので、肉声をCDで聞いて補えると思いますが、「もっと聞きたい」という気にさせるのも、作家や柴田氏の魅力の一つでしょう。 p 英語教育の出版社が版元ですが、英語の教材としても優れていると思います。 いずれも、シンプルな言葉で、深い世界観を語っています。
読者の幸せ・・
独自の世界を持つ作家が考え抜いた言葉ひとつひとつを、音声とともに楽しむ機会を得られる幸せ。しかも聞き手と訳文はあの柴田元幸氏。(柴田氏の声がまた、渋い。)文学を愛する人、作家を目指す人、翻訳家に憧れる人、英語を学ぶ人、それぞれに活力を与えてくれるでしょう。それだけでなく、人生について、世界について、人間について、深く考えさせられる必読必聴の一冊です。話す速度はそれほど速くないので、ヒアリングやシャドウイングの学習にもお薦め。
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【くちコミ情報】
柴田さんの引き出しの多さを実感
雑誌を全ページ読むというのは、70年代の「現代詩手帖」以来か、とすると30年ぶり。 冒頭の柴田さんと小川洋子さんの野球をめぐる対談から、こんなに面白くていいのかなと引き込まれてしまう。 柴田さんによって選ばれた作家陣は癖が強く、いやあ、これはまいったと思わされる作品もあったけれど、独特のバランス感覚で、胃にもたれず読みきれた。 古典のメルヴィルの「バートルビー」よかったです。阿部知二、坂下昇に続く新訳ですが、この作品の現代性を感じられました。引きこもりの法律事務所員が主人公という。 野球ファンの中学生の息子にも少しは薦められるかな?
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【くちコミ情報】
実際に英文を訳して楽しめば文句なく五つ星
これは、実際にテキストにある英文を自分で訳して、時間をかけて楽しんだならば、文句なく五つ星ですね。「翻訳教室」の部分と、村上春樹をゲストに招いてその創作の秘密を探る部分と、一粒で二度おいしい本でもあるし。 それにしても、最高学府に入学すれば、こんなにも楽しく充実した授業が受けられるってことで、受験生の励みにもなります。言葉の選び方がいかにセンシティブで重要かって言うことがよくわかる。「日本語は罵倒語のバラエティーが貧しい」なんてのはまさに文化な訳で。逆に、「相手に対して利益、不利益になることを言う表現は日本語の方が豊富」なんてこともある。ゲストのジェイ・ルービンの「翻訳とは科学的なものじゃない。(中略)客観的に、何の感情も入れないで訳しても、ある言葉の文法をもう一つ別の言葉の文法に移すだけで、無茶苦茶になってしまう。個人の解釈が入らないことには、何も伝わってこないと思います」ってのもよくわかる。たまにWe のExcite翻訳で日本文を英文に訳して、その英文をさらに日本文に訳して、っていうのを機械的に合わせ鏡のように繰り返すって遊びをやるんだけど、数回繰り返すと伝言ゲームみたいに奇妙奇天烈な文章になっちゃうんだよね。やっぱ翻訳って人ありきだよな。 詳細は読んでのお楽しみだけど、村上春樹が学生の質問に答える形で、珍しく作家評や自らの創作方法、自作の批評に対する考え方などを明かしていているのも興味深い。村上春樹の読者にもお薦めの一冊になっています。
ポイントがわかる
わかり易くまとめられて面白い内容でした。コツというか、知っておかなくてはいけないことは結構やはり多いのだねと感じました。 スキルを強化という感じを受けました。
翻訳の精神と苦労
「文章とは、単に意味を伝えるのみならず、それを書いた者の肉体生理をも伝えるものでなければならない」。本書を読んでいる間、常に頭から離れなかったのが福田恆存のこの言葉だった。もし福田が正しければ、翻訳者は二重の苦労を背負うことになる。すなわち、原作者の生理を正しく感じ取り、今度はそれを正しく訳文に反映させるという苦労である。本書を読めば、翻訳とは単なる言語変換作業ではなく、原作文の奥底を洞察し、変換しようとする言語にそれを組み込むプロセスに他ならないことがよく分かるだろう。 著者と学生は本書の中で、こうした高い志をもって一つの単語の意味、文章中における位置、リズムなどについて侃侃諤諤している。読者もこの授業に参加することによって、言葉に対する感性が大いに刺激されるだろう。ただ、他者の語感は必ずしも自分のそれと一致しない。学生世代との語感の違いに時おり戸惑いを隠しきれない著者の姿が微笑ましくも興味深く、こうした部分も翻訳の難しい点だと気付かされる。また、著者は学生と共に考え、共に悩みながら授業を進めており、自身の訳文に対する学生の指摘を素直に認める懐の深さが実に清く快い。 さらに、村上春樹が『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のyouの訳し方について説明している部分(P160)も誠に奥深い。ここだけでも何度も読み返す価値があると思う。「翻訳とはネイティブに訊けばわかるというものではない」との発言は挑戦的ですらある。 ただ、残念ながら本書にも欠点がある。それは、こちらがいくら声を張り上げて質問しても、本の中の先生が振り向いてくれないことだ。これには大変なストレスを感じるので、いつの日か、言葉というものに執着を持つ一般人向け実地講座を開催していただきたい。
柴田氏の、教師としての一面を垣間見る本です
『英米小説演習』が授業のレポートなら、さしずめ本書は授業の「実況中継」。 まず筆者らしい、授業風景のコマメな説明が4ページほどあり、300語〜400語程度の英文原典を、2・3文に分け、学生数人の訳文をていねいに添削していくのが授業の骨格で、その添削過程が授業の 本書の中味。そこから、翻訳の苦労というか、吟味のしかたが、あるときは主観的に、またあるときは経験法則に基づいて、じつに愛情ある細やかな配慮がなされ、同時に、学生たちへの懇切謙虚な指導がなされている。本書の帯のコメントも、本書を出版する意義について読者に対してある種の申し訳なさを含めて書かれてある文章も必読。 そういう意味で、読み物としても楽しいし、英文和訳の実戦テキストとしても愉しく使えます。
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笑いながらさっと読めます
英語に関する小話と自分の体験談を織り交ぜながら、まじめそうで可笑しいエッセイが満載。軽い読み物として笑いながらさっと読めます。英語に縁がある読者にとっては思いもよらない英語表現を発見できるし、筆者の翻訳本を読んだことのある読者にとっては筆者のパーソナリティが垣間見られて面白い。
おかしさを噛みしめる
本書は、講談社エッセイ賞を受賞しているが、読んでみて納得。とにかく無類におもしろいのだ。テーマは、英語および英語圏の人々のメンタリティーについてなので、そういったことに興味がある人には、無数のティップスを提供してくれる。 p しかしそれ以前に、読み物としてとてもすぐれている。なにがそんなにおもしろいのかというと、それは、本人のまぬけな体験談と、さまざまな書物から見つけてくる、奇妙な文章たちだ。一見真面目に書かれた文章の、かくれたおかしみを見つける力は、それだけで大きな才能と言っていい。特に、スペルミスを扱った、「しずくを止めるには」には爆笑。 p 英語に縁がある人はもちろん、ただ大笑いできるエッセイを探している人にも、十分満足できる内容。
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【くちコミ情報】
人の良い方なんだなぁ
きたむらさとしさんのほのぼのとしたイラストが散りばめられた、読んでも見ても楽しい、柴田さんの思い出や、日常の所感を綴ったエッセイです。“マヌケな自分”をネタに笑いを誘うという手は相手の警戒心を解いてくつろがせるために良く使う手だと思いますが、柴田さんは相手をくつろがせた後もあの手この手で楽しませてくれます。狙っている笑いの質は高く、なるほど面白いことを言うなと思うことばかり。物事の微妙な感じや、機微を感じとる能力に長けていらっしゃる方だと思いました。「また読み返したい」と思うエッセイです。
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【くちコミ情報】
さすが
確かに本の帯には「美味しいものばかりとは限りません。いや、むしろ・・・」と書いてある。 それなのに、なぜか私はキラキラした香ばしい料理を期待して読み始めてしまった。 それに有名な翻訳者、柴田さんの紹介なので、私がよく知らないアメリカ文学の世界に超魅力的に誘ってもらえるものと。 そしてそれは一部、間違いでした。 なんだか不味そうな料理がいっぱいです。 そして料理以上に、紹介されている小説の内容や登場人物もなんだか。 美味しそうな食べ物も出てくるけれど、変なモノの方が強烈で全体的にキラキラはしていないな。 「あとがき対談」で正にそのような効果をねらって書かれた本なのだ、と納得しました。 だからと言ってこの本がつまらない訳では決してなく、きちんとアメリカ文学へ誘われ、読みたい小説が見つかります。 最初に私がイメージしたキラキラした料理は「大草原のナントカとか赤毛のカントカ」とひとくくりに除外され、もっとずっとディープなラインアップ。 巻末に詳細なインデックスが付いていて、「あれ、あの話なんだっけ?」とか「あの作家のなんだっけ?」という事態にも対応可。 長くおつきあいしたい宝物系の本です。 エッセイ的な部分も楽しめます。 柴田さんが、よくするらしいご自身を小説の中に登場させる妄想が面白い。
品のよい文体の愛らしい文学エッセイです
(主として)アメリカ文学に出てくる食べものを枕に、作品を紹介するエッセイです。おいしそうなものから、これはどうか…というものまで、24のエッセイがメニュー仕立てで読者にサーブされます。 柴田氏の訳書は、どんなガサツな世界を描いていても日本語の品のよさが絶妙で心地いいなぁと思いながら手に取るのですが、このエッセイの中で紹介される作品の食をめぐるシーンの部分訳(ほとんどが氏の手になるものですが、他のかたの訳文も紹介されています)はもちろん、地の文も軽やかで品よく(さらに磨きがかかっているように思います)、すいすいと読み進められます。ゼーバルトやダイベックはひととおり押さえてらっしゃるというかたも、まったく手に取ったことがないかたも、さっぱりと楽しめるように思います。 加えて、装丁と構成がシンプルなようで凝っていてとても愛らしいのです。角川書店さん、ナイスデザインです。目次のメニュー仕立てにふふっと笑い、地の文が明朝体、作品の訳文が教科書体と、各ページに見た目でアクセントがついていることに嬉しくなります。吉野朔実氏の手になる表紙と口絵のラブリーさも2重マルです(巻末のあとがき対談も楽しい)。柴田氏?と思われるメガネ男性がほぼ毎回描かれています。 手にとってから読む途中、読後まで楽しめる1冊でした。大事に作っている(本当はどの本もそうだと思うんですが)作り手の思いもびしびし伝わってくるので、☆5つです。
お腹一杯というよりは、むしろお腹が空く
メニューに始まってデザートまで、フルコースが登場しますが、面白かったのは、「不在の食べ物」とか「不味い食事」「飢え、空腹、断食」とか、”食べ物がない””あっても不味い”話。アメリカの作家は”旨いもの”に興味がないのか?? でも『白鯨』の揚げパンは、美味しそうでした。
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膨張する仮定
柴田元幸が幽霊と言った場合、多くは「もしもあのとき、こうしていたら」という仮定のもと、現実よりリアルになってしまった空想を指す(たぶん)。その『幽霊』を通底音とする短編集。 物語の中、主人公の空想は唐突に始まって、当人にも止めることができない。その前には現実なんてぺらぺらの絵みたいになって、そのうち見えなくなってしまう。 その種の空想にしょっちゅう巻き込まれている(空想しているというより、自分が空想に絡めとられている)人もいるし、そんな空想があるなんて考えたこともない人もいる。幽霊を見る人もいれば、見ない人もいる、ということだ。前者はこの本を読んで違和感がないだろうし、後者は変な夢でも見たような気分になるだろう。 この作者がエッセイ中で百フの名台詞を引いて強調しているように、教訓じみた明瞭なテーマみたいなものはない。仮定は人生を豊かにしますとか、そういう話では全然ない。だから安心して読める。 作者は専業小説家ではないけれども、小説的な技術レベルはきわめて高い。その点も安心である。エッセイで魅力を発揮していた、だらりだらりと続く長いセンテンスはなりを潜めて、おおむね端正な文体にまとまっている。残念なような、読みやすくて嬉しいような。 そうして、やっぱりこれは愛の物語であると思う。バレンタインの贈り物に相応しいロマンティックなお話では全然ないけれども。
不思議な小説集
なんだろう? 不思議な小説集だった。 小説なのか、エッセイなのか? でもエッセイにしては現実味がないし、 小説にしてはこれまた現実なのか虚構なのか 分からない不思議な世界が展開されている。 ここにリアルさはほとんどないといってもいい。 でももしかしたらそういうのもあるんじゃないの?って 思わせてしまう、 錯覚させてしまう 不思議な物語の連続に こちらの感覚も麻痺していく、そんな感じでした。 本当に不思議の世界に迷い込んだような でも、何故だか落ち着いていられる、 そんな妙なでも心地よい読後感を味わえた。
訳しても通じるだろうという普遍性
「バレンタイン」で始まり、「ホワイトデー」で終わる十四の短篇集。 翻訳家・柴田元幸の小説と聞いて最初に興味を持ったのは、「舞台はどこなのだろう?時代はいつなのだろう?」と言うことだ。そして、それは日本であり、著者の幼少期から現代だった。どの短篇の主人公も、“まるで”柴田元幸なのだ。エッセイに限りなく近い小説。エッセイは事実にある程度規定されるけど、そういう意味で小説は自由だ。身辺を描きながら幻想を交えることが出来る。過去と現代を往復できる。もちろん小説にも“小説でなければならない”という形式論的な不自由さはある訳だけど。この短篇集には、少なくとも“あの柴田元幸が初めて書いた小説”という周囲の過剰な期待に縛られるところはない。エッセイの延長線上のような力の抜け具合で成功している。小説家としては、うまい滑り出しのような気がする。 日本の、しかも著者の身辺や思い出をモチーフにしながら、これは訳しても通じるだろうという普遍性を持っている点は、さすがだ。 「バレンタイン」で“君”は“かつての君”に語りかける。「僕は十代より二十代の方が楽しかったし、二十代より三十代の方が楽しかったし、三十代より四十代の方が楽しい」。僕もかつての僕にそう語りかけることの出来る僕でありたいと思った。
少年柴田君、平成に登場! いや、学者柴田さん、あの頃に回帰!
柴田のもとゆきさんが、小説書いた。僕は、さっそく書店へ行き、わくわくしながら、購入したのだ。 さて、柴田さんといえば、あの翻訳家の柴田さん。あの柴田さんが小説だって? ぱらぱらとページをめくれば、あら不思議、なんとも素敵な物語ではないか。それはそれは、へんてこりんな物語。 少年柴田くんが、いっぱい出てくるし、僕まで少年になったみたいだな。 ほんのちょっぴり、でこぼこ感があるのは、ご愛嬌。だって柴田さん、小説家じゃないものね。 バレンタイン、あるいはホワイトディに、素敵な恋人に贈るのにぴったりな本ですねぇ。
起きながら見る夢
「昨日こんな夢見てさ〜…」などと、職場や学校の友人、または家族に話すことは誰にでも経験があると思います。しかしなかなか詳しく思い出せずに、結局奇想天外で大雑把なストーリーだけを話すと「なにそれ〜」と笑われたり…。 私には、そんな「夢」を、起きながら丁寧に見せられているような印象を受けました。 これはなかなか難しいことだと思います。所々ユーモアもあって時に声を出して笑うのですが、次の瞬間心の底から笑えないようなリアルさが顔を覗かせてハッとすることが何回かありました。読みやすく上品で空虚な文章が、淡々と日常のリアルを的確にもぎ取っていく様子に、しばし心地よく翻弄されます。
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体験者にしかわからない気持ちが書いてある。
運命的に引き寄せられる本との出会いというものが 時折存在する。 この本もそうだった。 「体の贈り物」を読んだあと、この本も読みたいと思っていたところ、 たまたま立ち寄った書店の店頭でばったり出会ってしまった。 購入して、一気に読んでしまった。 同じだ。父の時と。母の時と。 患者の家族であれば誰もが通る道。 それでもその家族ごとに異なるストーリーがある。 自分のことなのに 少し突き放したような抑えた文体で 実際に体験したひとの感情が淡々とつづられている。 まだ体験したことがない人にも、 既に体験している人にも、 ぜひ読んでもらいたいと思う。 日本とアメリカの火葬の違いに少し驚いた。
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