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現代史の記述が少ないがそれでも読む価値は大
台湾の歴史(平凡社、2007年1月発行)。著者は、台湾大学歴史学科周教授です。台湾通史としては、先史からごく最近までを扱っています。現職前は中央研究院台湾史研究所におられたせいか、従来の一般書に無い資料や写真も豊富です。 本書は、観光を扱った本ではありませんが、観光客が何度も台湾に行っていると芽生える、台湾って一体何?という興味に答える本でしょう。 戦後の光復については、民族間の断絶とコミュニケーションの難しさが存在していることを、事実から掘り起こして書いておられます。日頃台湾の人たちの意見が様々に分かれており、新聞を見てもTVをみても、支離滅裂、お祭り騒ぎ、出身母体が違うだけであれほど考え方が分かれるのは何故か、といったところが多少なりともその理由が理解できました。 また、228事件の記述から始まる戦後の戒厳令下での抑圧と統制の模様。それは涙無しには読み進めません。 でも、暗い話ばかりではありません。先史から現在までの事実が淡々と示されてあり、写真や挿絵も多く、予備知識が全くなくても台湾の通史を氷河期から現代までこれ一冊で理解しやすい仕組みになっています。 ただ、著者も書かれているように、現代史の部分が少ないです。他の類書も同じなのですが、やっぱりそれがネック。一番読んでみたかった部分だけに残念。
台湾を理解するために
台湾の歴史におけるよい入門書の一冊です。 もともとは台湾の人に台湾の歴史をわかってもらうために1997年に書かれた本です(そうです、台湾の人は台湾の歴史がわかっていません)。たくさんの写真を使いながら、難しくて複雑な歴史をわかりやすく説明していました。だからといって、物事を単純化にするのではなく、たくさんの資料を用いて、物事をいろんな面からとらえようとした作者の苦心が読み取れます。 日本では台湾は親日的という言説になりがちだが、実際の状況はもっと複雑で、その島に住んでいるたくさんの人々の異なる思いがあります。一面的な言説ではなく、このようなちゃんとした歴史書を読み、歴史背景を理解した上で、現在の台湾と日本、台湾と中国を考えるほうがよりよい未来のためになると思います。日本語版のため、戦後の部分が新たに書き下ろされた。現在の台湾の複雑な状況をわかるのに、とても参考になります。台湾に興味のある人に、ぜひこの本をお薦めしたい。
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【くちコミ情報】
ユーカラクルとの交流録
本書は金田一京助の随筆の中から、アイヌ語研究に関するものを集めた一冊です。 学術的な内容ではなく、彼の研究を巡る人々との交流史と言ってよいでしょう。 ことに、彼に多大な影響を与え互いに響きあった知里一家との出会い「近文の一夜」は繰り返し劇的に語られます。 「アイヌのホメロス」と称えた紫雲古津のワカルパ翁とのエピソードや、コポアヌ婆さんとの交流もまた然りです。 生前の金田一氏は、女性的な優しさを持ちながら、同時に熱情的な口調の持ち主であったと言われます。 本書の文体からは、それがそのまま伺われる気がします。 とはいえ、行間からはアイヌ語研究にまつわる苦労も伺われます。 まだ貧窮していた金田一家を訪れるアイヌの人々に対する彼の家族の感情や、 習俗の違いから来る誤解など、直接的には語られないものの、現実には美しい話だけでなかったことは分かります。 金田一氏の研究に、様々な批判があることも知っています。 人の死の局面に臨んで、なおユーカラの採録に努めようかという姿勢に疑問を呈する人もあるでしょう。 「近文の一夜」のエピソードも、人によっては非常識と映るでしょうし、知里幸恵に語った言葉もまた、意見があるに違いありません。 現在の観念からすれば適切でない言葉使いや表現が、文中に数多く含まれているのも事実です。 しかし明治から昭和にかけての通念が今と同じである筈がなく、 逆にそこまで時代から飛躍してしまっていれば、彼の研究もまた成果を挙げられたか、どうか。 アイヌの口承文芸である「ユーカラ」の価値が認められたのに、彼の貢献がいかに多大であったことか。 知里幸恵の日記を読んだことがあります。そこには溢れるような金田一氏への尊敬の気持ちが綴られています。 私はできれば、それを信じていたいと思います。
「心の小道」をめぐって
アイヌ研究の途上出会った人びとのことを中心にした随筆集である。「何」というアイヌ語「ヘマタ」を知ってからアイヌ語採集の幅を広げていく様子が描かれ「心の小道」と改題され中学校国語教科書にもなった。「盲詩人」の主人公・ワカルパは金田一アイヌ学には不可欠の一人。知里幸恵・真志保姉弟がつながる叙事詩人の名門・金成家もワカルパと同系であることが語られている。 最後に載せられた講演記録「心の小道をめぐって」が最も金田一京助の全貌が集約された自伝になっている。 大学で言語学を専攻し地元に近いことで、アイヌ語と日本語の関係を担当することになった。北海道を手始めに、カラフトアイヌを本格的に調査するようになる。ことばこそ心と心をつなぐ小道だという考えに到達する。やがて、アイヌのホメロスとも言うべき叙事詩ユーカラ三千行の採集にかかる。生活難の中にも、友人石川啄木の下宿料を払ってやったりしたこともあったという(雅)
イランカラプテ
金田一京助の出合ったユーカラにまつわる人々について書いた随筆を集めた本です。ユーカラで使われているアイヌの古語を採取するため、樺太に渡るが、言葉が通じないためだれにも相手にされず、途方にくれてしまう。自分が描いた絵に子供達が興味をしめすので、目やまゆげを書くと口々に指差してしゃべりはじめたので、最後にグルグル線をひいてみせたところ「ヘマタ」と口々に言い出したので、「何」という単語がわかり、言葉が通じ始め採取に成功する。という有名な「心の小経」をはじめ様様な随筆がのっています。どの文章も、ユーカラを教えてくれた人たちに対する感謝の気持ちがあふれていて読んでいて心温まるものでした。著者の発音するきれいなアイヌ語にふれて、うれしそうにするアイヌの人たちの様子。言葉が通じたことを喜び 子供達といっしょにぴょんぴょん飛んで笑ったときの楽しい様。横たわって、自分のわき腹をたたきながらユーカラを唱え始めたのに感激した話。著者が「心の小経」というタイトルをつけたのは「言葉によって心が通い合うことができたことを例えたのだ」ということがですが、読んでいるとそれがしみじみ伝わってきます。ユーカラを意味がわからないまでも、発音をローマ字でノートに書き取っていったところ、「真ん中がどのページもひとりでに、すーっとあいている」それを見て、ユーカラが叙事詩であることに気がついたといった件など、著者の好奇心と研究熱心な様子や発見の喜びが伝わってきて楽しい本でした。 p とくに「アイヌをにっこりさせる一言」と副題がついた「イランカラプテ」という文章が楽しかったです。道や畑で著者に笑いかけるアイヌの人々の描写がほほえましく、本を読んでいてこちらもにっこりしてしまう暖かい随筆でした。
金田一京助が出会ったユーカラの人びと
21世紀の現在、アイヌといえばユーカラが思い浮かぶのは自明だが、そのユーカラを「発見」したのが金田一京助であった。アイヌは昔も今もユーカラを謡っていたが、それが叙事詩であることに気づいた最初の人間が金田一京助であった。 その発見の過程や、そこからアイヌ研究に人生を賭ける決心をする過程が興味深い。官僚風な服装から部落へ行っても警戒され話も出来ない状態から、会話をしアイヌ語を書き取るまでに至る過程は、関心を引く。 この本人は、何人ものアイヌの人びとが登場する。ユーカラ名人のワカルパ、金城マツ、知里幸恵、名寄や樺太のアイヌの人びと。私が興味を持ったアイヌは、コポアヌ婆さんである。明治の時代に、家族不和から家出のような形で上京したことをきっかけにその後8度も上京し、そのたびに稼いでおみやげをたっぷりもって帰る婆さんである。そのたくさましさが読んでいておもしろかった。 ★一つ減点したのは、この本は雑誌や新聞の記事などをまとめたものであるため、同じ人物の説明が何度も出てくることである。繰り返しの説明のためくどさがあるが、本の性質上、これは仕方のないことだろう。ただし、各記事から表れる金田一京助氏の人柄、研究姿勢、アイヌの人びととの関わりを知るにはよい本かと思う。
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| 道教 (東洋文庫 329)
川勝 義雄(翻訳)
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道教の入門書
この本には道教を研究するための基礎的な知識が詰まっている。道教の教団のことや養正術のことなど。中途半端な寄せ集めではない研究書だから、有る程度ちゃんとした知識を得ることが出来る。これを読んでいると道教について知っているつもりが全く知っていなかったことに気付く。参考文献一覧も結構役に立つ。分量の割には内容が濃いために手元に置いておくことをお薦めする本。
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「千夜一夜物語」初の直訳!!
イスラーム世界に限らず興味深い歴史読み物を書かせたら、おそらく日本一の名文家たる前嶋信次氏の手になる『アラビアン・ナイト』の決定版です。これまで、マルドリュスやリチャード・バートンといった旧いヨーロッパ系諸語からの重訳でしか読めなかった「千夜一夜物語」が、ようやく本邦初の完訳版として刊行されました。巻末の解説文や索引もなかなか面白いし、何かと役に立ちますよ。 p ただしかし、例えば59ページのバドルッ・ディーンの寝乱れ姿の描写など性愛ないし性器関係の描写が他の本と異なっている点が気になります。もちろん様々な写本があってしかるべきなのですが、戦後の中國の書籍に時折見られるような「性に関する描写の検閲」が働いているとしたら、たいへん残念なことですが、真相は奈辺にありや。
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能に親しんだ人にも読み応えあり
えてして、小難しい文章になりがちな能のあらすじをマンガで載せた本です。最初に昔話の語り調に要約した文章。そして本体のマンガ。端には増田正造氏によるこぼれ話もあって、それぞれの能の曲に対する知識に深みがあり、ある程度、能に親しんだ人にも読み応えがあります。 p 能の会、特に初心者向けの会でこのマンガからの引用を解説として使われることが多いことが、この本の実用性を物語るなによりの証拠でしょう。
漫画なら分かりやすいかと言うと?
漫画にすれば受け入れられるだろう、との意図は大方正しいと思うが、これから能を見ようと言う人に本作を勧めるのは如何なものか。少なくとも能をある程度見た事のある人でないと、あらぬ予断を与えてしまいかねないと思うのだ。形式的で予備知識が必要で進行の緩やかな能の舞台を、マンガと同じ様な感覚で捉えられても困る。 p かと言って、本作を否定する気はさらさらなく、私のように古典の素養のない者が能を見るのに不可欠な、「予習」の一助として使うのに最適ではなかろうか。
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【くちコミ情報】
読む時、話す時には場所を考えましょう・・・
実に面白い視点であります。小学校の頃(いたらぬ人間は中学校ぐらいまでかな・・・)、なぜ子供は汚い話をふざけてしてしまうのでしょうか、と疑問に思ったことはないでしょうか。それは何も今頃のはなしなのでしょうか、と思ったことありませんか。 p 本書を読むと、以外ではなかったのですが古事記にはじまる書から竹取などの物語などなど、古典でいかに「糞尿」というものが扱われきたかがわかります。視点の一つは、今も昔もかわることない、というもの。もう一つの視点は穢れ、臭いというものは神聖なるものと表裏一体の扱われ方をされているというものである。決して教科書などでは知ることができない日常行為を歴史的に考察するというのは意義あることだと思います。読む時、話す時には場所を考えましょう・・・
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