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アドルノの思想の限界
20世紀を代表するT・W・アドルノを鋭く批評した伝記です。当時の時代状況と他の思想家のテクストを照らし合わせながら、アドルノの思想の限界があぶり出されています。アドルノは既存の思想に無批判であり、マルクス主義、精神分析、第二ヴィーン学派に盲従していました。また、筋金入りの合理主義者であったため、いかなる問題にも解決できるという信念がありました。それがアドルノの商品交換であり、文化資本でした。つまり、既存の思想の枠内でしか思考できず、若い頃に受容したモダニズム的な思考を最期まで捨て去ることはありませんでした。アドルノの精神分析の利用に関しては、社会的な態度や見解の背後にある現実の理由を見出せていなかったとし、「潜在的なファシスト的な個人」の調査(第12章)と「グループ実験」(第13章)においてかなりの無理があったことが分かります。また、ハイデガー批判においては「できごと」などハイデガーが歴史に関する基本概念を創出した点を見落としたとしています(296頁)。結果として、アドルノは思想の面でも音楽の面でも取り残された、と筆者はまとめています。 さて、アドルノはカトリックの影響下に置かれていましたが、最終的に訣別します。他方で、言葉と芸術(音楽)の一体性・類似性に気付いたのはオペラ歌手であった母親の声の影響だと筆者は推測しています。それならばカトリック的な生き方を勧めた母親との葛藤はなかったのでしょうか。家族がアドルノに与えた影響についてもっと触れてもらいたかったです。また、筆者はアドルノを「時代遅れの思想家」として描き出していますが、一連のベートーヴェン研究には現代性があると私は思います。近代において『荘厳ミサ曲』は可能かという問は、9・11テロ以降において祝祭的あるいは享楽的な『交響曲第七番』に我々(特に日本人)は無批判でよいのかという問を今日もたらしていると私は考えます。
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現代社会の必読書
哲学を宗教的認識から左、右に関係なく分析している点において、分かりやすく、そして宮台氏が影響を受けたのは必然的である。しかし彼はこの両者をパッケージとしてでなく、コンサバティブに転換したため、残念である。現代社会は左も右も表裏一体であり、彼の右寄りの思考段階は悲しいものである。もう一度、ボルツを原点に宗教の認識を問い直す時代であり、彼自身も信仰を告白するべきだ。だからと言って彼を批判しているわけではない。オマージュしているところも多い。しかし近著の憲法解釈はあまりにも極右すぎる。今は人に対する、思いやり、優しさの方がファーストプライオリティであり、政治は勝手に回る時代である。しかしボルツを評価している彼は現代社会を迷走する世直しモード政治学者としての貢献度は大きい。資本主義に変わるものは、現実的に実現不可能であり、原点はこの本にあると思っている。
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サバイバルを知るうえで有効
主人公の女性は、ドイツ領ポンメルン地方の地主、名望家の出だった。 ところが、郷里にして生活の場であるこの土地は、ソ連軍、次いでポーランド軍に占領されていまった。そして、ドイツ人たちは、自分達の住居も農地もすべて奪われ、さらに略奪強姦の被害を受ける事態となった。 そんな中、名望家の当主を始めとする男たちは、何代もの教育の下、「名誉と死」しか知らず、没落の中にあってのサバイバルについては全くの無知無策であった。 兵士による略奪・強姦の相次ぐ中、女性達は、自分の機転や行動で生き延びていくしかなかった。 西側占領地区に避難するための鉄道に乗車する際にも、 ロシア兵やポーランド兵の暴漢を避けながらも、 彼ら占領担当官の中にも、味方を見つけて、事態を乗り切っていくのだ。
自分と家族を守るためのサバイバル
主人公の女性の生家は、土地の地主で名士だった。 それなりに気骨もあって、避難民の支援のためには、ナチス将校とやりあったこともある。 また、ナチスの捏造報道にも騙されず、戦局も読みきっていた。 それでも、いざソ連軍とポーランド軍の占領で、家財産土地、それどころか身の安全・自由まで奪われる段階になると、全く役に立たなかった。土地の男性達は、「名誉か死か」の教育しか受けておらず、没落しても強かに生き延びる術には全く無知だったのだ。 主人公は、歩いての旅でも鉄道でも、他の女性達とともに、 ロシア人やポーランド人などの兵士や検査官に、衣服を切り裂かれ、所持品没収、強姦の危機にさらされ続けた。そんな中、なんとか出し抜いて、ボロボロの衣服をまとい、没収品をこっそり取り戻し、茨だらけの叢に逃げ込んで何とか難を逃れ続けた。 しかも、一度西側占領地区に逃げ込んだ後も、母親や妹、娘、ひいては捕虜にされた父親救出のために、再び危険な帰還までしなくてはならなかった。 こういう体験談こそ、もっと大勢の人に読まれなくてはならない。
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