国土の3分の2も森林で覆われているこの国の人々が、木の家に住むことを勉強しなければならないのはちょっと皮肉な気もするが、なぜそうした現状に至ったのかをも再認識させられる1冊。 森の意味、森づくり、森で生きる人などのマクロな視点。木の図鑑、木材の科学などのミクロな視点。そして、その木を相手に仕事をする建築家や棟梁の仕事ぶり。肝心の木の家の実例も含め、全体が丁寧な取材と詳細データにより構成され、木と家に関心を寄せる人がいつも手元におきたい本に仕上がっている。ページをめくるだけでぬくもりが感じられる写真やイラストをふんだんに使いながらも、この種の本によくありがちな絵に描いた餅にとどまらないのは、自然科学や社会科学の視点によるおさえがあるからだろう。
だから、「木」と「家づくり」を学ぶうちに、地球の環境や日本の文化についても考えさせられる。付録とはいえ200語あまりの木造住宅用語辞典ひとつとっても、日本人のものづくりに対するこだわりと知恵を伝えるのに十分だろう。家は買うものではなく建てるものであることを、声高にではなく説く考え方に共感する読者も多いはずだ。銘木にさえこだわらなければ、木の家が決して高値の花ではないようである。
同じ農文協から出されている『近くの山の木で家をつくる運動』、自然住宅をつくる人と住む人の両面から取材構成した『街中が森になるといいな』(北斗出版)なども参考に。(土肥 菜)