2008年07月24日(木) 大宅壮一ノンフィクション賞の第1位は
『甘粕正彦乱心の曠野』!
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【くちコミ情報】
綿密な調査による甘粕正彦像
既に他のレビュアーによる詳細かつ的確なレビューがあって付け加えることは余りない。従来、余り知られていなかった満州国時代の甘粕正彦の姿を浮き彫りにし、また新しい証言を得て大杉殺害事件の真相が最後に語られる。大変な力作である。しかし、この長い評伝を読んでなにか違和感のようなものが残った。 それは(日本)帝国というものが国民とは別に存在するかのようにみる歴史観である。それによると何か猛々しい帝国の意思といったものがあって、甘粕はその犠牲者に矮小化されてしまうことになる。 著者はあとがきで、「この評伝を、大正、昭和という時代に翻弄されたひとりの人間の魂の成長の物語、いわばビルドウィングスロマン(教養小説)を構想しながら執筆した」といいながら、甘粕のことを「社会主義の洗礼を受けた大正デモクラシーの息吹とは無縁の軍人街道をまっしぐらに突っ走った」ともいう。社会主義思想の浸透、そしてロシア革命成功に対する時代の危機感は軍人に限らず、国民にかなり共有されていたのではないだろうか。
いつものことだけど、タイトルも含め実に佐野眞一らしい一冊。
佐野眞一の評伝の特徴は、描こうとする人物が何をしたのかということに主題があるのではなく、彼(彼女)を突き動かしたものは何だったのか、といった事実の裏にある人間性そのものを描き出そうとする点にある。 そして、著者は膨大な資料と格闘し、多くの関係者への取材を試みる。そうやって書かれる評伝はどれも非常に読み応えがある。ただ、そうして描き出された人物像が悪く言えば著者の思い入れが強く反映されることに加え文章も濃い(悪く言えばくどい)ので、好き嫌いが分かれる作家なのだと思う。 この作品もそうだ。例えば、“甘粕は底光りする内面の闇によって周囲の人間を魅了しただけではなかった。甘粕はその闇から放つ強烈な磁力で彼らの魂まで吸い尽くし、彼らを生ける屍のようにしてこの世に残し、満州の消滅とともにひとり逝った男だった(p324)”というような文章が随所にあらわれる。 そして、この引用した文章にある「磁力(あるいは磁場)」という単語は彼の作品に頻繁に登場する言葉なのだが、この言葉が佐野眞一の作品を最もよく表している。彼の作品になじめない人には、これが、単なる著者の勝手に思い込みさらに言えばこじつけに感じられるのではないかと思う。 わたしは、ノンフィクション作家は歴史研究家でも学者でもなく、もちろん事実(資料との格闘・関係者への取材)の積み上げが前提にはなるが、評伝という作品形態においては、その対象とする人物を作者がどのように解釈(それがたとえどう読んでもそれは思い込みだろうと突っ込みをいれたくなっても)するかは作者の特権であり、読者はその解釈の正誤を判断する前にそれをひとまず受け入れた上で作品として優れているかを判断すべきと考えているので、彼の評伝は読んでハズレタと感じたことはない(ただし、東電OL〜に代表される彼のルポ物は別。磁力「磁場)にこだわる彼のルポ物は実に読むに耐えない)。 この一冊も実に佐野眞一らしい作品だ。ただ、甘粕のパーソナリティを知る上での重要なファクターではあるが大杉事件の真相が主題ではなく、あくまで佐野眞一が描く甘粕正彦像が主題なので、大杉事件や満州で甘粕がかかわったとされる謀略そのものに関心がある人にはあまりお勧めできない。
明治に生まれ、大正に翻弄され、昭和に死んだ男。
林真理子が浅丘ルリ子を題材に書いた「RURIKO」の冒頭で、満映時代の甘粕正彦の記述があり、それが思いのほか思慮深く情に厚い人物として描かれていたのが、保守的な林の筆によるものだとしても意外だった。甘粕と言えば、やはり大杉栄と伊藤野枝殺し、ファシスト、狂信的な国粋主義者との先入観があったからだ。今著は死後60余年、未だ一般には謎めいたベールに包まれている甘粕の光と闇、真実に肉薄するルポルタージュ。今まで、その人物像に触れる事が殆どなかった者にとっては興味深く読めた。 本書の構成は大きく分けて、大杉事件と獄中生活以後、そして満州時代の3つ。膨大な文献、資料と多くの関係者へのリサーチから、その極めて複雑特異なキャラクターと、大杉事件や満州国建国まで近代史に残る事件の謀略の舞台裏を検証する形を取っている。歴史的大物から芸術家、右から左まで甘粕周辺の登場人物たちの多種多彩さに驚かされるが、読むほどに、その懐の深さと私欲には一切執着しない潔癖さ、稀代の謀略家であるにも拘らず、一度信用した人間は決して疑わず、結果を導き出せるなら相反する主義主張者も登用するといった人間性がクローズアップされていく。 とは言え、500頁近くの力作ではあるものの、淡々とも言える著述ぶりが一本調子な為、読み進める内に飽きがくる。“冷酷非道と思っていた人物が実は、、、”的なパーソナル的な人物論に収斂してしまう印象は否めない。時の帝国の権力組織の思惑に翻弄され続けたカリスマ的大物の数奇な一生を通じて、魑魅魍魎が跋扈した暗黒時代を照射するような試みを期待したんだけどね。
執念深い調査と大陸ロマン
従来の甘粕像を覆すという意味では、角田房子の『甘粕大尉』が既に十分な仕事をしており、因習にとらわれず合理的で、人に優しい男としての側面が描かれている。 それでも一般に甘粕につきまとう冷酷・残虐というイメージは重く、それは戦前期の陸軍憲兵隊、そして戦中の満州国が抱えた闇の深さを彼が一身に背負い、振り払おうともしなかったためでもある。甘粕を慕う人間は多かったが、同時に多くを語らない甘粕の闇を利用して、自身のみそぎを果たしていく人間も多かった。 『甘粕大尉』で、大杉事件については黒に近いグレー、真相は闇の中、という書き方をしているが、本作では真犯人を特定している。ただし、大杉殺害の下手人が誰であったかは本書の主題ではないし、事件は甘粕のその後の暗躍の入り口にしか過ぎない。満州で甘粕は、表と裏、昼と夜を股にかける帝王であり、彼の本来の能力が見事に発揮される。佐野はもう一歩踏み込み、新しい資料を用いて甘粕の人間くささを明らかにする。文章からは著者が前作以降、満州に魅了されている感じがよく伝わってくる。戦後日本は数え切れない満州の遺産と位牌の上に繁栄を遂げた。戦後日本のルーツを満州に探ること、そこで跋扈した多くの魅力的な日本人を記録すること、前作から続く佐野の問題意識であろう。最後に、甘粕の周囲の人間のその後を執拗に追っている。この執念と活劇的な描写が著者の真骨頂と言える。個人的には、甘粕本人よりも甘粕の妻、娘がその後辿った人生が何より興味深かった。
「人間はまた会いましょうといいますが、二度と会うことはありません」
大杉栄殺害の実行犯として歪められたとしか思えないような評価と解釈が流布してきた主人公の甘粕です。著者は帝国の闇を探った前作の延長線上で甘粕にたどり着いたようです。はたしてどこまで闇とその真実にたどり着けるたのでしょうか。たしかに相当多数の生き残りの証人そして当事者の係累に精力的なインタヴューを重ねています。そしていくつもの新資料も出てきたようです。しかし余りにも長い時間がたってしまったようです。肉声の証言も、もはや証言としての価値を持つのかどうか私には判断はできません。最後に「85年目の真実」なるものもでてきますが、これで一件落着というわけにはいかないでしょう。この真実はたしかに著者が作り上げた甘粕像とそれなりにフィットするものです。しかしながら、それを裏付ける帝国側の資料は結局のところありません。帝国の闇は闇のままです。もっと悲しいことに、著者が捜し当てた甘粕像も余りリアリティを感じさせることはありません。満州時代に乱れ咲いたとされる甘粕ですが、その華麗さもいまいち描けていないようで、別種のステレオタイプの構築に陥ってしまった感を与えます。むしろ現実感を持つのが著者がインタヴューした数多くの関係者の戦後の軌跡と生き様です。著者が取り上げた甘粕の長女の戦後の軌跡は数奇なものです。あまりもの急旋回振りは戦争直後の日本では決して珍しいものではありませんが、悲しいものです。付随的に取り上げられる戦後の日本への満州人脈の潜入はそれ自体で興味深いものですが、どれももうほかの場所で取り上げられたテーマであり、格別深い掘り下げが行われているわけでもありません。
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【くちコミ情報】
政治に翻弄されながらも、それでも子供は育つ
米原万里の人格形成史に色濃くある、現代社会主義政治史、中ソ論争、ハンガリー動乱、プラハの春、ベルリンの壁の崩壊、ソビエト連邦の解体の歴史を背景に、日本共産党を代表し世界の共産党連絡機関に勤務する父親とともにプラハの春前後のに在住した社会主義国体験を出発点とする物語です。 おしゃまな少女だった米原による、プラハのソビエト立学校で社会主義圏や各国共産党関係の子供たちと出会いぶつかり会った個性的な友だちの何処にでもいるおませな日常の風景と、友たちの個性の背景に隠れている国際共産主義運動内の各国共産党の序列と党内闘争、更に深くある各民族の歴史と宗教の理解が長い時を経て了解されていく過程が、スリリングに展開されていく。 それぞれの友たちが歴史に翻弄されながら幼年時の面影を残しあるいは残さず、激動を生き抜いた個人史が、米原万里により描かれる。 政治と距離を置くことが出来ない時代・空間に迷い込み翻弄されながらも、生きる残る人々の逞しさも垣間見える。
小説以上にエキサイティング
在プラハ・ソビエト学校の同級生たちに、大人になった「マリ」が再会しに行く。すると、東欧の渦に巻き込まれて、彼女たちは少女の頃からは想像もつかないような人生を送ってこといるが明らかになる…。 「事実は小説よりも奇なり」ということばは、まさにこういったノンフィクションのためにあるのでは、と思わされる。東欧の激動の歴史と、それによって育まれた少女(女性)たちの個性、そして、在プラハ学校の中でもちょっと異質だった(だろう)日本から来た「マリ」と彼女たちの関係性。それらの一つひとつが、冷静かつ冷めすぎずあたたかい絶妙な筆致で描かれている。久しぶりに「次へ、次へ」とぐいぐい読まされる小説(ではないけれど)でした。
とても素敵な本です。
語り口調がメインで話が進行するので、 東欧にさほど興味のない人でも読み進めることが出来ると思います。 もしも、地理が苦手な方でしたら 地図を用意するとより一層深く話を理解出来ると思います。 全ての章が名作で、本当に感動しました。 ただ、アーニャに対する批判はちょっと.....と思いました。 彼女のバックグランドを知れば、余計にそう思います。 チェコに限らず、外国人学校に通えるという事に関しては いうまでもなく国力のある外国人の特権でしょう..... 国力がない国は外国人学校を作れませんものね。 それは、わたし程度の常識の持ち主でもわかるのだから あれだけ聡明な彼女がわからないとは思えないのですが。 この些細な一点を除けば全て感動出来る作品です。 日本ではアメリカの情報は溢れ出る程ありますが、 東欧の情報はあまりありません。 専門書では取っ付きにくく読みにくい、 ガイドブックやムックでは情報が浅すぎる。 初版からやや時間は経っていますが、 東欧情勢を知るに語るにこの本は最適ではないかと思います。 絶版にする事が早い事で定評のある角川文庫から出ていますが、 いつまでも版を重ねてほしいと切に祈りたい。 名作です。
必読! でも本書のタイトルはなぜ、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』なのか?
周知のように本書に描かれた米原と3人の元同級生の再会は、96年に放映されたTV番組『世界・わが心の旅』(NHK)によって可能となったものだ。米原が旧友たちの消息を気にかけていたのは事実だろうし、だからこそ番組の企画も成立したに違いないが、当然ながら3人の元同級生の所在が確認された上で撮影班は出発しており、米原による探索行は実際にはなかった。また本書での米原と3人の印象的な対話の傍らではテレビマンユニオンのカメラが回っていたはずだが、本書に撮影班は登場しない(通訳は登場する)。 教条的な共産主義的言辞を愛好していた「嘘つきアーニャ」はルーマニアに帰国後、「赤い貴族」である父の計らいで一般民衆には不可能な国際結婚を果たし、今は英国で編集者として活躍している。自分の現在が何を踏み台にして可能であったかに無頓着なまま、「今の私の90%はイギリス人だ、民族なんかに拘るのは愚かだ」と嘯くアーニャに、米原はやり切れぬ怒りを抱く。しかし… プラハのソビエト学校が、現地の人々の目には特権階級の学校と映っていたことに米原がショックを受ける場面が本書にあるが、そんなことは当然ではないか。米原も含め、その生徒たちの全員が、多少なりとも「アーニャ」なのだ。「真っ赤な真実」とはきっと、「共産主義国式の真実」って意味だよ。現地支局による手配も怠り無く、恐らくはNHK名物の大名行列のような撮影班を引き連れ、豊かな資本主義国で国内的に消費される感傷的なストーリーを撮り上げるために戦火の迫るユーゴにまでホクサイの版画を抱えてやって来た米原を前に、ヤスミンカの絶望が深まったのでなければいいのだが…
混乱する東欧の側面史
’60〜64年、東欧へのソ連の締め付けがゆるみ始めた時代に、プラハのソビエト学校に在学した作者が、その時の同級生の生活や考え方を描き、その後のプラハの春、ベルリンの壁崩壊、旧ユーゴ内戦と続く中で、その後の彼女たちの生き方、考え方を捉えてゆくドキュメンタリーになっています。 この中に登場する3人の女性の個人史的な内容ではあるのですが、同時代に生きていた私たちにとって、ニュースでは知り得なかった東欧の現代史の側面を垣間見せてくれる貴重な資料です。 3編のエッセーは、それぞれ読み応えがある素晴らしい作品です。中でも、この本のタイトルになっている「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」では、旧社会主義国の内部矛盾(エリート階級の特権)をアーニャ自身が体現しています。 個人的に気に入ったのは「リッツァの夢見た青空」で、「ギリシャの青い空と白い波」への憧れは、一度訪れたギリシャの地を思い出させてくれました。 もう一作の「白い都のヤスミンカ」も、旧ユーゴ内戦の中の劇的な再会を描いており、これもなかなか魅力的な作品です。
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【くちコミ情報】
日本人として読んでおきたい内容です。
本書は「週間ダイヤモンド」「週間新潮」「産経新聞」に掲載された直近一年のコラムを加筆してまとめたものです。 北朝鮮外交、チベット問題、韓国・台湾の政権交代、薬害肝炎、揮発油税暫定税率...とタイムリーな内容が、櫻井氏の毅然としたなかにも穏やかさを感じさせる語り口で論じられています。 櫻井氏の論文は僕達一般の国民にも素直に届いてくるので、ニュースや新聞の理解度が深まります。 また「それは違うだろう」というような突拍子もないことは言わないので、安心感を持って読むことが出来ます。 日本国民として本書の内容くらいの知識は最低限持っておきたいと思わせる良書だと思います。
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【くちコミ情報】
熱い!熱い!熱い!
香港・マカオ編は、とにかく熱い!毎日が祭りのような香港の庶民街の熱気に、常に頭に 血が昇ってるぐらい白熱してる大小という博打。とにかく読み出したら、止められなくて あっとゆうまに最後まで読んでしまった。ユーモアもあり、うら寂しさもあり、勉強にも なるので誰が読んでも楽しめるんだろうなぁコレは。黄金宮殿などという贅沢な?(笑)宿 の件も何か微笑ましい。やっぱり沢木さんの人柄も大きいのかもなー、変に繕う事もないし だからって品がない訳でもないから、もの凄く読みやすいし、なんかどんな状況におちいって も後腐れなく気持ちがいい感じを受けるな。 それに明暗も両方ともしっかり描いていて、賑やかな祭りの裏での浮浪者の件や、日本に 強い憧れを抱く青年の件も何か感慨深い。 それにしても大小は面白そうだなー、僕は普段、麻雀しかしないんだけど、大小・・・いつか やりにいってみたいぜ! 後、巻末に付いてる「出発の年齢」って対談も、色々背景を知れて良いです。
溢れかえる物乞いに対してあなたはどう対処しますか?
この本が書かれたのがたしか1980年代。 私は海外に行った事が無いので、この本を読んでまるで自分が体験しているような錯覚に陥っている。 単なる仕事からの言い逃れの為に、香港からロンドンへ陸路をつなぐ旅へ旅立つ著者は、様々なカルチャーショックを体験しながら、いつか自分自身を見つめなおし、またその呪縛から解放されてゆく。 シルクロード編を読んで思った事は、私は溢れかえる物乞いに対してどういう行動を取れるのかということ。その一つの答えがあった気がします。 海外に旅立つあなたは、本当の旅人になれるのか? 行く前に是非読んで欲しい!全巻読み応えがあります。
非常に危ない本
何でこんなに共感を呼ぶのだろう。私は既に中年とも言えるサラリーマンだが、確かに全てを放り捨てて旅に出たくなった。仕事柄、年中海外には行っているのに、である。 著者は26歳までに旅を出るのが良いと言われ、旅に出た。であるなら、この本は26歳までに読むのが良いのかも知れない。が、若くしてはまると永遠の旅人になる恐れが確かにある。それはそれで幸せかも知れないが・・・ この本はバックパッカーのバイブルかも知れない。だが、僕が思うに、この本の通りにその土地に行くという使い方ではなく、著者の旅の仕方なり考え方を自分の旅に取り入れるのが良いと思う。それは著者の好奇心であり、謙虚さであり、だが一方自分を主とした考え方などなどである。『ちょっと冷やかしに行ってみる』、とか『不思議なまでに言っていることが完璧に分かる』などは自分を主として考えなければ思いつかない。自分が分からない言語の会話を聞いて、言っていることが分かる訳はないのである。ただ、自分の中で想像しそれが合っていると100%分かったと思い込んでいるだけなのである。 だが、それで良いのだ。だれが点数を付ける訳でもない。自分が、自分のために旅行しているのだから。それが、しがらみの多い世の中で、常に他人を気にしている私たちがこの本に、この生き方に強烈に魅かれる理由なのかも知れない。
無計画に毎日を過ごす贅沢
私も20代の頃アジアを旅行したことがあります。ひとりで目的地に行くまでの過程は十分刺激的でしたかそれでもだいたいの計画は立てていたし「地球の歩き方」は手放せませんでした。 この本ではデリーからロンドンに行く以外の計画がありません。マカオでは賭博にハマりデリーでは街を彷徨して毎日を過ごします。 朝起きて「さて、今日は何をしよう」と自らの心の声に従うのです。 カレンダーに予定を書き込む生活をしている者にとっては何と贅沢なうらやましい毎日でしょうか。 そして賭博や徘徊も「ここで切り上げよう」という内なる声がするのです。 フランスのピエールのように退廃に沈殿してしまう可能性もあるのに著者はそうなりませんでした。 単なる旅行記のようですが、自分の思うところに従って生きる自由さ(その自由さは日本ではなかなか手に入れがたい)がこの本にひきつけられる理由だと思いました。
"デリー以前″ 旅の夜明け
デリーからロンドンまでバスで旅することができるか。 作者沢木耕太郎さんが、まだ誰も証明したことのないこの壮大かつ無謀な計画を実行し、その旅の道中を綴った紀行文。それが「深夜特急」だ。 綿密に計画され、計算された旅ではない。思い立ったが吉日と、心赴くままに旅をする沢木さんの奔放さと豪快さが伝わってくる。1巻は副題通り香港・マカオの紀行であるが、これはロンドン――デリーを繋ぐ線の、まだ外側にある。東京からデリーに直行しようとしていた沢木さんは、香港でストップオーバーできることを知り、「よし、それなら」といきなり計画変更するのだ。 賢明にではなく、いかに酔狂になれるか。 沢木さんがこの旅に秘めた一つの想いだ。それは「自分がどこまで自由になれるのか、なりたいのか」という挑戦であり、問いでもある。デリー以前の1巻で、マカオの賭博にどっぷりとはまってしまうくだりからも、これが綺麗事や理想などではないことがひしひし伝わってくる。旅先で出会う人や町のはっきりとした輪郭を、それらの持つ光と影を、匂いや感触を、興奮や慄きをダイレクトに、そしてダイナミックに綴る。 この旅は、一体これからどうなるのだろう。決してありふれた道徳観や正義を振りかざさず、流れ流され、赴くままに、感じるままに旅を続ける沢木耕太郎さん。「深夜特急」2巻の旅も、ぜひ乗車しようと思う。
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インドの様子が分かります
カルカッタ/ブッダガヤ/カトマンズ/ベナレス/デリーと転々としながらいろんな経験をしている様子が分かります。 筆者が旅行をしている時代のインド/ネパールの状況も分かります。 現在の状況と比較してみたくなりました。 前2巻と比較して、重たい内容も多くなっており、筆者が旅に慣れて現地のいろんな状況を感じ取ることができるようになっていると感じました。
インドの怖さ
インドには言ったことがないが、言ったことがある人、 住んだ事がある人からいろいろ聞いた事があるが、 皆人生感が変わったと言っているのを読んでいて思い出した。 アジアから旅をしてきての精神的なものが加わり、インド的なる ものの一旦が感じられた。 川での死者の場面は特に印象に 残っている。
行き当たりばったりの危うさ
冒頭に飛行機のチケットでもめる件がある。 自分だったらどうするか考えてしまうが、 読む側もハラハラさせられてしまった。 インド・ネパールは行き当たりばったりの バッグパッカーに必ず訪れる喪失感を上手く描いている。 それは、周りに飲み込まれてしまう惰性でもある。 第3巻は、そんな憤りを上手く書いている。
猥雑そして混沌
インドに行ったことがある人にはわかると思うのだが、インドは決して神秘の国ではない。どちらかというと哀しいくらいに俗っぽく、猥雑・混沌だ。騙しとボッタクリ、気が遠くなるくらいの非効率、そして沈没してしまった人々・・・・・。 この本を読むとそれらのものが一緒くたになって蘇ってくる。インド滞在時に慣れきっていたケロシンとハシシとインド人の腋臭の臭いがごちゃ混ぜになって漂ってくる・・・・。 この本は五感を刺激してくれる本だ。彼の地にいなくとも、あの時の感覚がよみがえってくる。インド旅行経験者にもお勧めする。
旅に出るなら、読んでソンなし
ボクはこの本を読んで、24歳のとき、バックパックをかついで 一人旅に出ました。 沢木さんのようにユーラシア大陸横断というわけでなく、 東南アジアを半年近くかけて下っていくというものでしたが。 p 旅先で知り合った人々はかなりの割合で『深夜特急』を読んで いました。それほど影響力のある本です。 p 久しぶりに読み返してみましたが、やはり面白い! 時を経ても 色あせないですね。旅に出たくてムズムズしてきました。
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ワレ到着セズ
言わずと知れたバックパッカーのバイブル。 香港からトルコまでの面白さにはさほど争いは無いと思う。 しかし、この6巻で冒険物語を締めくくるのに相応しい 壮大なラストを期待した読者は少々拍子抜けするかもしれない。 私も最初は疑問であったが、その意味を知ったとき、 この小説は全く期待を裏切っていないどころか更なる可能性を示唆して フェードアウトしているということに気付いた。 つまり、こういうことである。 サグレスにて旅の終わりを決意した『私』は 目的地と思っていたロンドンの中央郵便局に到着するが、 それは単なる勘違いで、最初から目的地なんて存在しなかった。 そこで再び考えを改めるのである。 『だったら、どこで旅を終えてもいいじゃないか』 そして、気の向くままにアイスランドへと行くのだ(多分)。 『ワレ到着セズ』とは『旅に終わり(目的地)などない』という これほどまでにシンプルなメッセージを強く発しているのである。 バイブルの名に恥じない、これ以外は考えられないほどの最高のラストだと思う。
長旅の終わり
イタリア、モナコ、フランス、スペイン、ポルトガル、再びフランス、そして最終目的地のイギリスとヨーロッパを旅しています。 最終目的地が近いのに、旅の終わりを決断できず、なかなかそこへ行くことができない心境というものが伝わってきます。 ポルトガルで旅の終わりを決断した後もパリで数週間過ごすということもあり、気の長いたびであったと感じました。 自分もそのような旅に出たくなりました。
旅は自由なものであると教えてくれる旅行記
26歳の沢木青年(筆者)が香港からロンドンまでをバスで旅した、すでにクラシックに分類されるのではないかと思われるベストセラー旅行記。旅の計画もガイドブックも持たず、一年以上かけてただひたすら偶然と気分に任せて旅をするスタイルは、時間単価の高い短期旅行しかしてこなかった私には、こういう楽しみ方もあるのかと逆に新鮮であった。危険を恐れて逃げてしまえば、安全である反面、その向こうにあるかもしれない貴重な経験をする機会を失ってしまうという姿勢が旅全体を通して貫かれていて、現地の人々との出会いを大きな包容力を持って楽しんでいる点はとても共感できる。なぜもっと能動的に目的を持って旅をしないんだろうかと首を傾げつつも、逆に受動的であることによって、現地のあるがままの生活や文化を極限まで吸収して味わうことができるのかなと妙に納得させられる。全6巻あるが、旅の光景が湧きやすい文章なので、すらすら読めてしまうだろう。
深夜特急は終わっても、心の旅に終わりは無い。
1巻から6巻までもう何度読んだか分からない。 なぜならこれだけ現実離れした経験をしたいと思ってもできないからだ。 深夜特急はそんな現実逃避したくなる時によく読む。 6巻は、これまでの混沌としたアジア、シルクロードと違って大都市の匂いがしてくる。 文化の違いに差がなくなってくるからだろう。 しかし、ここでも沢木は根っからの博徒なんだろう。またモナコのカジノでやってしまう。 マカオでの賭けを再現してしまう。 そういうとんでも無いことをしてしまうことが、読者を惹き付けるのだろう。 いろんな人物が影響を受けたのもうなずける。 この深夜特急を読んで「チューヤン」や「猿岩石」を思い出してしまった。
これで終わり…
かなり面白い本だっただけに、この終わり方には正直がっかりです。アイスランドのような、広大な国土を持ちながらも不毛の地を旅したのなら、そのエピソードも読みたい。 さらに一巻から六巻になるにつれて、旅のテンションもどんどん低くなってしまった。そこも残念。一巻から三巻までが星5つ。四巻、五巻は星3つ。そして六巻は星2つかな。
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ビジョナリー・カンパニー
ビジョナリー・カンパニーでは「業態は変わってもビジョンが変わらなければ産業の構造変化にも会社は耐えうる」といった視点だったように記憶している。 本書では、結果論的ではあるが結局持ちこたえてきた、小さなシーズから変化することに成功した老舗企業の姿勢に共通する部分を垣間見ることができる。 削る文化とは? 重ねる文化とは? 結局ITで「何をどう便利にしたいのか?」よくみえないニーズが、こういった書籍に散らばるキーワードから見えてくる。 ネムリユスリカ。 基本に忠実。ただし考え方は七変化。 vision【名詞】先見、先見の明、洞察力、想像力、考え方
掘り下げは浅いがこれでいいと思う。実に楽しく読むことができた。
「○○だけをつくり続けて○百年」という老舗ではなく、創業時からの技術を現代に生かし柔軟に対応することで生き残ってきた老舗企業や、様々な分野に進出しつつも頑固に本業(家業)を守り続ける老舗企業が紹介された一冊。 中心となるのは経営者へのインタビューなので、サラッとしかも実に楽しく読むことができた。どの企業の紹介も簡単にしか書かれていないし、どんな企業にも現時点で存在するはずの経営上の問題点にも殆んど触れないので、読み応えという点では物足りないが、こういった本はこれでいいと思う。 著者が楽しみながら取材をしている様子を感じることができるので、日本もまだまだ捨てたものではないな、といった爽やかな読後感が残った。 「世界最古の会社」と言われる「金剛組」が殆んど紹介されていないのは、この本の趣旨に合致しなかったからなのかもしれないが多少残念。
TBSはパクったの?
25年来ノンフィクション作品を書き続けてきた著者の力量には定評があるが、この作品はその中でも傑作である。著者が取り上げる様々なテーマの中でもこの作品は軽いもので、軽妙な文体とあいまってあっさりと読めてしまうだけに、一読しただけでは印象に残らないように思われる。しかし、読み返してみるとなかなかにすごい作品である。 この作品の肝は、そのユニークな視点にある。いくつかの偶然の出来事を拾い上げてそれを押し広げる展開をする無理のある著作が多く出版されている現在において、著者は老舗と先端技術がつながっていることを実に多くの例を取材して丁寧に紹介することによって、それが偶然でないことを示し、その背後にある日本の精神のようなものさえも浮かび上がらせることができたように思う。 【蛇足】NHKが著者を招きこの本を元にした番組を作っていたが、この本を下敷きにしたとしか思えなかったTBSのスペシャル番組に一切著書・著者の言及はなかったのはなぜなのだろう?
タイトルは、「百年以上、働いてきました」にすべき
内容は面白い。着眼点がいい。一気に読んだ。日本にはそう大きくなくても、世界に誇れる独自の技術力を持っている会社がたくさんあるが、本書はその中から100年以上の歴史を持つ企業に焦点を当てて紹介している。 特に、「伝統は革新の連続」というキーワードは心に残った。実際、本書に出ている老舗企業の多くはコア・コンピテンスを大切にしながら時代に合わせてそれをうまく新たなイノベーションにつなげていることが良くわかる。米国にはイノベーションに関して考察した優れた著作がたくさんあるが、本書の事例はそのようなビジネススクール向けの研究対象としても興味深いケーススタディになるだろう。クリステンセンやポーターや故ドラッカーなら、これらの企業の強さの秘訣や背景をどのように分析するだろうか。少し知りたい気もする。 ただ、本書のタイトルの「千年、働いてきました」というのは本書の19社中でただ1社だけである。ある程度印税を稼ぐことを意識しなければならないことは理解するが、誇張し過ぎない適切なタイトルは他にもある筈だ。100年以上の会社を集めたのだから、どうして正直に「百年以上、働いてきました」にしないのか。本文にこのような誇張はないと信じたいが。この点については、本書の著者は取材した老舗企業の方々の誠実さを学ぶべきだ。
老舗は「動」の組織
本書には、創業100年以上の老舗が取りあげられています。 長く続く老舗に、日本の誇りを感じます。 中国などでは、家族とカネだけが頼りですべて血族企業になって、長く続かないのだそうです。 それに対して、日本は、血にこだわらず、優秀な人を後継に迎えているところが多いということです。 そして、日本は、アジアの中でもは珍しく職人が尊ばれ、国や政府などの権力者が職人を保護してきました。職人もそれに応え、信頼感を持っていたようです。 老舗は、伝統を守るだけの「静」の企業ではなく、柔軟性と即応性をもった「動」の組織が多いようです。 それでありながら、これだけは譲れないという頑固さがあるようです。 職人を育て「もの作り」を大切にしていく、伝統を大切にしてきたいものだと感じました。
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【くちコミ情報】
ヨーロッパへの旅
アジアからヨーロッパへと移動して行きます。 トルコとギリシャの旅ですが、アジアからヨーロッパへと街のようすが変わっていくのが分かります。 長旅で慣れてきたのか、現地の人たちとの触れ合いが多くなってきているように感じました。 この巻では特にトルコからギリシャへの国境を越える部分が面白かったです。
ヤース!
確 |